2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K09762
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
濱口 儒人 金沢大学, 医学系, 准教授 (60420329)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | FcγRIIB / 全身性強皮症 / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Fcレセプターは免疫グロブリンのFc部位に結合する受容体で、主に白血球の細胞表面に存在している。免疫グロブリンのIgGに対応するFcレセプターがFcγ レセプター(Fcγ receptor: FcγR)であり、IgG型免疫グロブリンのFc部分と結合しエフェクター細胞を活性あるいは抑制することで自然免疫と獲得免疫を仲介し、生体防御系を調節している。FcγRには、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)の3つのサブセットが存在する。このうち、FcγRIIBは細胞内に抑制性シグナルを伝達するモチーフを有し、免疫反応を抑制する。本研究では、全身性強皮症のB細胞上に発現しているFcγRIIBの発現を検討し、全身性強皮症におけるFcγRIIBの役割を検討することを目的としている。本年度は、全身性強皮症におけるFcγRIIBの発現を検討した。全身性強皮症患者の末梢血B細胞をIgDとCD27の発現により4つの分画に分離した(naive B細胞、pre-switched memory B細胞、switched memory B細胞、plasmablast)。さらに、switched memory B細胞をCD27の発現によりIgD陰性CD27陰性のdouble nagetive switched memory B細胞とIgD陰性CD27陽性switched memory B細胞に分類した。pre-switched memory B細胞とIgD陰性CD27陽性switched memory B細胞、plasmablastでは全身性強皮症患者と健常人との間でFcγRIIBの発現に有意差はなかったが、naive B細胞とdouble nagetive switched memory B細胞ではFcγRIIBの発現は全身性強皮症患者で有意に高発現していた。B細胞上の活性化マーカーを検討したところ、CD95の発現は全てのB細胞分画において全身性強皮症患者では健常人と比較し高発現していた。以上より、全身性強皮症ではB細胞を抑制的に制御しているFcγRIIBの発現が上昇していることが明らかになった。今後、抑制因子であるFcγRIIBの発現亢進がどのように病態に関与しているか検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
もともとの計画では、今年度はFcγRIIB欠損マウスを用いたマウス線維化モデルを作成し、次年度以降に全身性強皮症患者におけるFcγRIIBの発現を検討する予定としていたが、先に全身性強皮症患者におけるFcγRIIBの発現を検討することにした。本研究の仮説として、B細胞を抑制的に制御しているFcγRIIBの発現は全身性強皮症患者で低下していることが予想されたが、その仮説に反して全身性強皮症患者ではB細胞上のFcγRIIB発現は亢進していた。今後症例数を増やしてさらなる検討が必要だが、全体として研究の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、全身性強皮症患者のB細胞上のFcγRIIB発現について症例数を増やして検討を行う。また、臨床症状(発症年齢や性別、罹病期間、自己抗体、皮膚症状(皮膚のスキンスコア、爪上皮出血点、レイノー症状、指尖潰瘍、手指屈曲拘縮、皮膚石灰沈着など)、臓器症状(間質性肺炎、心病変、消化管病変、関節症状、筋病変、腎病変など)、臨床検査値など)とFcγRIIBの発現に関連がないか臨床データを用いて検討を行う。また、重症度(厚生労働省強皮症調査研究班により作成された「強皮症における診断基準・重症度分類・治療指針」で定められた重症度分類を用いる。重症度は、全身一般、皮膚、肺、消化管、腎臓、心臓、関節、血管ごとに基準が設けられている)との関連についても検討する。治療による経時的な変化についても検討したい。さらに、マウス線維化モデルを用いた検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度では、全身性強皮症患者のB細胞上のFcγRIIB発現およびマウスを用いた実験や培養試薬を用いた実験を予定しており、研究費が必要なため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では、全身性強皮症患者におけるB細胞上のFcγRIIB発現についてフローサイトメトリーを用いた解析を行う。また、in vitroでの培養実験、マウスの実験を予定している。これらの研究には各種の抗体やサイトカイン、培養試薬、マウスの維持管理費が必要であり、研究費は消耗品に使用する予定である。
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