2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K09900
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Research Institution | Ibaraki Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
森 浩一 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90274977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 知幸 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (30704605)
関根 紀夫 首都大学東京, その他の研究科, 准教授 (70295434)
小原 弘道 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (80305424)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝臓 / 血管 / 放射光 / 位相イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究費で新たに購入したX線カメラ(ピクセルサイズ約50μm)の基本動作特性と空間分解能について、医療用X線管を用いて確認・測定した。豚肝臓3体(2体は摘出後6時間程度以内、1体は摘出処理後に冷凍保管、実験前に解凍)を用い、放射光を用いた血管系のX線位相コントラスト撮影を行った(撮影①)。肝動脈や門脈から生理食塩水、リンゲル液、ヨード造影剤等(以下、造影剤等)を注入・循環し血管描写能を調べた。また、撮影①の直後に、2つの肝臓試料においては、ヨード造影剤を用い、X線吸収コントラストCT装置(以下,MDCT)による試料全体の撮影を行った(撮影②)。撮影①は、X線位相コントラスト画像における造影剤等の血管描写能(描写限界)を確認する目的で行った。撮影②は、試料内における血管分布や造影剤の流れの全体像を確認する目的で行った。主要な血管系全体に均一にヨード造影剤を分布させるためには、1回注入(ボーラス注入)だけでは不十分であり、肝臓血管系に循環機能が働いていることが必要である。MDCTによる肝動脈系と門脈系の立体画像を作成した。試料中央部では、血管の重なりによる像の不鮮明化が生じやすいことを確認した。画像描写の詳細は分析中である。 この研究は、肝臓血管系の末梢画像を得ることにより肝局所の塞栓や壊死の状況を把握し、移植に適した質の肝臓であることを確認するものである。現在、0.23-0.31mm程度までの末梢血管像の分析をほぼ終えている。造影剤等の血管描写能の確認は、血管像評価における基礎データとして重要である。今回用いた肝臓試料において造影剤等の注入速度は、肝動脈では1-20ml/min, 門脈では、40-60ml/min程度であった。注入圧は得られた画像とともに詳細は分析中である。本年度は、学会発表2件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画は、放射光を用いたX線位相コントラスト画像法により、豚肝臓の肝動脈と門脈から生理食塩水を循環した状態において、注入量と注入圧とのかかわりで肝臓末梢血管系を描写するものである。静止画像と動画像の撮影を計画していたが、現在は静止画像のみ得られている。ただし、これらの静止画像は、比較的短い時間において多数枚の撮影を行っていることから、ある程度の動的画像情報も含まれていると考えている。今後は、特に血管内流速が早い場合や局所の経時間変化の観察において動画撮影を行う。造影剤等の注入部位は、肝動脈のみ、門脈のみ、肝動脈と門脈の同時注入、の3条件について実施できた。さらに同じ血管領域に対して放射光を用いたヨード造影剤等を用いた撮影(生理食塩水に対する描写比較用の画像取得)、MDCTを用いた肝臓試料全体像の撮影を実施できた。MDCT画像は血管の変形に関する有限要素解析データとして利用できるが、計算方法は検討中であり解析はこれから行う。より末梢の肝血管系のX線位相コントラスト画像の分析は進行中である。 今回、造影剤等の輸送パイプ内壁において、経時的に微小な気泡が多数発生することが確認された。これらが肝臓内に到達する前に効果的に捕獲・除去する必要がある。これまでに除去方法について検討した。適切な構造のエアトラップを流路の途中に設置することが有効な解決策の1つと考えられる。また、試料容器の液体排出効率を改善する必要がある。 平成28年3月7日、首都大学東京秋葉原サテライトキャンパスにおいて研究メンバーによる検討会を開催し、撮影した全てのX線位相コントラスト画像の確認と評価、気泡除去の方法等を含む次回実験計画について確認した。以上より、さらに分析検討が必要なデータもあるが、計画された主な内容についてデータが取得されていることから、研究の進捗状況はおおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、①:輸送パイプ中の気泡発生状況の調査とエアトラップの気泡除去効果の測定。②:平成27年度に得られた成果の継続的な分析を通して、肝末梢血管系の画像を得るための方法の確認と検討、得られた画像の分解能において評価できる肝臓機能の評価とより高分解能画像を得る方法の検討(高空間分解能画像の撮影)である。現在ピクセルサイズ50μmのX線カメラで十数回に分け試料の全体像を撮影しているが、実験施設にある備品であるX線カメラ(ピクセルサイズ25、13、7μm)により肝局所の末梢血管像撮影(造影剤等を用いた静止画像)を行い塞栓・壊死領域の描写能について調べる。④:新鮮な肝臓試料(摘出後数時間以内)を用いた末梢血管系の血流動態像の撮影。⑤:非新鮮肝臓試料を用いた同様の実験(新鮮肝臓試料に対する比較データの取得)。⑥:血管の重なりによる像の不鮮明化を軽減する方法として、断層撮影法(トモシンセシス)の導入等である。 現時点においてX線位相コントラスト撮影実験に利用している施設(高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設)のX線設備の一部に故障が生じており、平成28年3月-5月にかけて修理・立ち上げ作業が行われている。ゆえに平成28年度予定の実験の一部が延期されている。我々の研究グループとしては、当該施設へ新たな研究利用申請が必要と考えている。なお、現在のところ当初の研究計画の変更は考えていない。X線設備の修繕状況を確認しながら、特にこのような期間は放射光を用いないで行うことができる関連実験や予備実験を行い、これまでに得られた画像データの解析もさらに進めることとし、適時において次回の放射光を用いた撮影実験を実施する。
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Causes of Carryover |
平成27年度においては、X線カメラの制御用ノートPC購入費用が不足することから、前倒し執行により20万円を追加して同機器を購入する計画とした。購入手続きを進める中、当初購入予定の機種が販売終了となったことで後継機種にて購入を進めたが前機種より高額のために予算不足となった。そこで後継機種の価格が予算内となる時期を待った。この間の実験は、購入予定機種より性能の劣る既存のノートPCで対応した(高速度撮影の能力が劣るノートPCを用いた)。以上より、研究代表者には残予算として、156,439円が生じた。本年度は2回の学会発表を行った。発表に用いた画像の一部は、研究分担者に配分した費用により、医療画像処理技術を有する大学院生に作成を依頼した。2回の発表後、当該学生が画像処理を請け負えない状況に至り作業を中断した。以上より、研究分担者には、残予算として、31,330円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者においては、平成28年度は、平成27年度からの繰り越し金と平成28年度の配分金によりX線カメラ制御用ノートPCと画像処理ソフトを購入する。ノートPC購入で不足する金額については、研究分担者への配分額を一部調整(減額)することで対応する。画像処理にかかる費用(人件費・謝金)については、専門の知識を備える別の大学院生などに依頼して、予定の作業を進める。また、費用の一部をこの研究実施に必要な消耗品購入に充てることで執行する。
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