2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックスを標的とする新たな治療技術の開発
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15K10071
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
住吉 秀明 東海大学, 医学部, 講師 (60343357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 陽介 東海大学, 工学部, 准教授 (40365408)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞外マトリックス / 再生医療 / ナノシート / ミズクラゲコラーゲン / V型コラーゲンα3 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は実験計画の開始年度であり、コラーゲンを基材としたバイオマトリックス担体の試作と、同担体をマウス体内に移植し、生体内における人工マトリックス環境と宿主細胞の相互作用等を調べる実験を行った。 ①バイオマトリックス担体(以下、担体)は当初のデザイン通り、ブタ由来I型コラーゲンと20%V型配合I型コラーゲンを基本成分としたものを作製した。凍結乾燥はt-ブチルアルコール溶媒下で行い、100% I型コラーゲンスポンジでは直径100nm程度の分岐のない線維構造、20%V型を含む含有スポンジでは直径50nm程度の分岐を持つ線維構造が再現されることを走査電子顕微鏡観察において確認した。 ② 作製した担体をマウスの皮下と体腔内に1週間設置し、宿主細胞の担体内への遊走とコラーゲンマトリックスの再構築状況を調べた。その結果として100% I型コラーゲンでは線維芽細胞、20% V型を含むものでは上皮細胞様の細胞が生着しやすいという、再生医学において興味深い成果が得られた。移植後1週間では生着した線維芽細胞による宿主コラーゲン線維の構築は殆ど観察されず、人工マトリックスの分解が先行して認められた。人工的なコラーゲン線維と自己再生で合成される宿主由来のコラーゲンは明瞭に見分けられた。 ③ 先行実験において細胞遊走活性の促進作用が認められたミズクラゲコラーゲンを担体の機能性成分として45%含ませた試作品を作製した。これを皮内移植してバイオアッセイを行ったところ、ミズクラゲコラーゲンを含有する試料に限り、線維芽細胞の著しい細胞誘引効果が確認された。ミズクラゲコラーゲンは、本実験において組織再生を促進する有用な機能因子として継続して検討される素材に加えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実験の初年度において計画されたバイオマトリックス担体の作製と、動物実験の施行は順調に進められている。計画はスタートしたばかりであるが、コラーゲンの精製方法、コラーゲンスポンジの作製方法、特にコラーゲンのもつ微細な線維構造が失われる通常の凍結乾燥法でなく、コラーゲン線維構造を凍結乾燥体で維持できるt-ブチルアルコール溶媒置換による凍結乾燥手法など、本研究を遂行する上で必要となるノウハウが先行研究である2012~2014科研費基盤研究(C)研究課題名「5型コラーゲンα3鎖が有する癒着防止活性の治療法への応用」 課題番号(24591918)によって確立出来ていたことが大きく寄与している。一方で解決されるべき検討課題も抽出され、例えばマトリックス形成にはたらきかけて癒着防止にはたらく機能分子として検討されているV型コラーゲンα3鎖は、完全長で単離することが難しい状況である。このようなの成分のアッセイ系として、ペプチドのような合成できる低分子化合物としてバイオマトリックス担体内に導入し、in vivoにおいて生物効果を評価する方法を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度においてバイオマトリックス担体のプロトタイプが確立され、また電子顕微鏡の超微細観察も含めた評価系も整備することが出来た。これらを用いて28年度は細胞外マトリックス(ECM)に作用して、再生ECMの分子構築や細胞の遊走、生着、分化等に寄与することの出来る機能分子を抱合させ探索する実験系をデザインする。機能分子は担体のコラーゲンスポンジ内に配合させるシンプルな方法により幾つかの事例で検討する。 ①機能分子としてV型コラーゲンα3鎖N末塩基性ドメインペプチドを用いる実験。対照実験として、V型コラーゲンα1鎖酸性ペプチドと生理的食塩水のサンプルを準備し比較する。この実験ではナノシートを用いた局在の制御を検討する。観るべきポイントはコラーゲン線維形成の抑制、上皮様細胞の遊走、基底膜の形成への影響である。 ②機能分子として前年度に線維芽細胞遊走促進活性が認められたミズクラゲコラーゲンを用いる実験。製法はV型コラーゲンと同様に担体を形成する行程で混合し、混合比と再現性を確認する。観るべきポイントは線維芽細胞の遊走、人工コラーゲンの分解と再生コラーゲンの構築、担体内の血管新生、遊走してきた免疫細胞の種類と数である。 ③機能分子として20%V型コラーゲンを含む担体基材を重層またはコーティングし、上皮化のための床として機能するか調べる実験。この担体を人工真皮として移植実験を行なう。観るべきポイントはケラチノサイトによる再上皮化と、基底膜の形成である。この実験は②のミズクラゲの実験系でも応用する。 これら①~③の実験系において、機能因子の効果による細胞外マトリックスの再構成、細胞の遊走、細胞の増殖、分化等、興味深い変化や影響を及ぼした事例があった場合、mRNA発現プロファイルの解析や抗体染色による形態の精査などの詳細な解析項目を追加して行なう。
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Causes of Carryover |
今年度は研究開始にあたって、スタートアップのため、または新技術であるバイオマトリックス担体の作製過程における初期トラブルを考慮して、物品、消耗品等に多めの研究費を割り当てていたが、コラーゲンを基材とする生体埋め込み素材の作製技術が先行実験により確立されていたこともあり、この部分で想定していたよりも早期に基本材型を決めることが出来た。また当初の実験計画に加え、産学連携による大学・研究機関の一般的貢献にむけた取り組みから海産物コラーゲン資源であるミズクラゲコラーゲンが研究対象に加えられた。この際に一定数のマウスは産学連携共同研究という形で譲渡して頂いた。これらの要因が今年度の研究予算を低減させることにつながっている。もちろん、次年度の実験項目は増加しているので、繰り越された予算はそのために用いられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
① 平成28年度は動物実験を主とした、マトリックスに作用する機能成分を試行しそのin vivoにおける作用を見定めていく過程である。動物の購入や飼育管理費、各種抗体、電子顕微鏡の試薬、発現マイクロアレイやリアルタイムPCR試薬等の物品の購入が必要となる行程であり、これらは平成27年度実験の延長でもある。繰り越しの予算はその充足にあてられる。 ② 産官連携研究のミズクラゲ由来コラーゲンは新たに見出された機能成分であり、担体内への線維芽細胞の誘引効果とそれに続く組織再生の促進作用を持つ画期的な新素材である。この新たに加えられた解析においても繰り越された予算を用いる事で計画している。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] A combination of mitochondrial oxidative stress and excess fat/calorie intake accelerates steatohepatitis by enhancing hepatic CC chemokine production in mice.2016
Author(s)
Moro T, Nakao S, Sumiyoshi H, Ishii T, Miyazawa M, Ishii N, Sato T, Iida Y, Okada Y, Tanaka M, Hayashi H, Ueha S, Matsushima K, Inagaki Y
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 11
Pages: e0146592
DOI
Peer Reviewed
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