2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックスを標的とする新たな治療技術の開発
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15K10071
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
住吉 秀明 東海大学, 医学部, 講師 (60343357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 陽介 東海大学, 工学部, 准教授 (40365408)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞外マトリックス / ミズクラゲコラーゲン / 再生医療 / 人工皮膚 / ナノシート |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は前年度に確立出来たコラーゲンを基材としたバイオマトリックス担体の作製技術を基盤とし、薬剤候補成分を添加した人工マトリックスをマウスに包埋することにより、in-vivoで組織再生・ECM構築にはたらく薬効成分を探索した。その結果、前年度に見出されていたミズクラゲコラーゲンは表皮角化細胞による再上皮化と線維芽細胞による肉芽形成について、両方を活性化することが改めて確認され、皮膚再生を促進できる新しい人工皮膚を開発できる可能性が示された。さらに、この新素材を社会に還元できる製品とするための追加実験を行なった。 ① 素材の形状の最適化。バイオマトリックス担体の加工形状を変え、最適な生物活性を示す形状の探索を行なったところ、再上皮化の促進についてはフィルム形状が、線維芽細胞による真皮様組織の再構築には、コラーゲン線維を模したスポンジ形状(t-BA溶媒下凍結乾燥法・27年度開発)が最もよく、最終的に表皮側に極薄のコラーゲンフィルムをコーティングした二層性スポンジによる新規人工皮膚素材を作製した。 ② ミズクラゲコラーゲンの添加最適量の検討。ミズクラゲコラーゲンの添加量を増量すると、表皮角化細胞の遊走活性は増加したが同時に剥離し易くなる傾向が増すことが示された。組織学的に良好な表皮角化細胞の形態を維持し、その遊走を促進する最適添加量は40~45%であった。 ③ 生物活性の確認。上記①、②を組み合わせて作製した人工皮膚をマウスの背部皮膚の全層欠損モデルに移植し、6日経過後の回復をバイオアッセイにて調べた。計測の方法は移植片の組織標本を作製し、創傷部辺縁からの表皮角化細胞が人工皮膚上を伸長した距離と、人工皮膚内部に侵入した細胞の単位面積あたりの数を画像解析することで行った。数値化した表皮角化細胞の伸長距離、線維芽細胞の遊走数をミズクラゲコラーゲン容量別に統計処理を行い、有意であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実験計画の目的である細胞外マトリックスから組織再生に働く有益な作用分子を発見することが出来、当初の予定どおり生体内のバイオアッセイにフィードすることで、効果を詳細に検証することも出来ている。特に本年度の実験系に用いた人工皮膚のモデルはコラーゲンスポンジの作製手法、有効成分の配合によるバイオマトリックス担体の技術を、そのまま用いる事が可能であった。今回、ミズクラゲコラーゲンが先行したことにより、移植担体の人工皮膚への応用、フィルム素材をスポンジ素材上に薄くコーティングする技術等、応用範囲が拡げられた。 バイオマトリックス担体でスクリーニングしている作用分子の中で、当初からの候補分子であるV型コラーゲンα3鎖は全長を用いる事が出来なかったため、ペプチドとしてミズクラゲの事例と共に29年度実験に用いる事にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の人工真皮は表皮角化細胞の生着が悪く、再上皮化が起こらないため、後日に表皮の再移植が必要となる点に課題がある。研究課題のバイオマトリックス担体の実験系で見出されたミズクラゲコラーゲンの自己表皮による再上皮化の促進効果は、新しい機能を持った人工皮膚を目指すものとなりうるものである。29年度は最終年度であり、成果を完成させるため28年度に確立された、ミズクラゲコラーゲンの成分が皮膚の再生促進にはたらくことについて、その検証を中心とする。 ① ミズクラゲコラーゲンを添加した人工皮膚モデルの長期経過の検証。短期(6日間)創傷治癒実験で良好な結果を示したミズクラゲコラーゲン人工皮膚モデルについて、長期予後(3週間から)の観察を行ない、再生がその後どのように経過していくかの確認を行なう。 ② ミズクラゲコラーゲンの再上皮化促進作用の機序解明。表皮角化細胞のモデル細胞株であるHaCaT細胞を用いて、in-vitro実験系による解析を行なう。ミズクラゲコラーゲンは可溶性を示し、培養液中に溶存させた条件にしてMTTアッセイによる細胞増殖能とスクラッチアッセイによる細胞遊走能に対するミズクラゲコラーゲンの効果を調べる。効果が認められた場合、発現マイクロアレイにより、ミズクラゲコラーゲン添加により変動する遺伝子発現プロファイル解析を行ない、細胞内情報伝達経路の探索を行なう。 ③ミズクラゲコラーゲン分子の作用領域の検討。ミズクラゲコラーゲンの効果は、コラーゲン分子の形態によるものか、ペプチドレベルで作用しているのかをin-vitro実験系により検証する。この実験系はV型コラーゲンα3鎖等、他の作用分子のスクリーニングにも応用される。 これに加え、実験の成果を効率よく社会に還元することを目指し、本実験を遂行しつつ産学で連携できる共同実験の構築に尽力する。
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Causes of Carryover |
28年度の支出は前年度からの繰り越しが55万円あったことから、結果的にほぼ予定どおりの支出となった。ただし、研究項目はミズクラゲコラーゲンの生体作用が見出されたことから増加している。29年度は最終年度としてミズクラゲコラーゲンの作用機序を解明するため、マイクロアレイ解析やリアルタイムPCR、免疫組織染色等を検討しているため、今年度は節約しつつ、追加された実験課題に取り組んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用分を主として、ミズクラゲコラーゲンの皮膚再生促進効果の生物学的機序解明のために用いる。具体的には以下の3つの実験を予定している。① ミズクラゲコラーゲンの皮膚における再生促進効果検証するためin-vitro実験系を立ち上げる。不死化表皮細胞HaCaT細胞に加え、初代ヒト表皮角化細胞と培養システムを購入する。 ② in-vitro実験系で、ミズクラゲコラーゲン添加の効果が認められたサンプル間でマイクロアレイ解析やリアルタイムPCRを行なう。 ③ in-vivo実験系で示されている、再上皮化と肉芽組織形成の促進についてその再生の健全性、特に表皮組織の階層性と分化について新たな抗体染色による観察を行なう。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Identification of a novel alpha-fetoprotein-expressing cell population induced by the Jagged 1/Notch 2 signal in murine fibrotic liver.2017
Author(s)
Nakano Y, Nakao S, Sumiyoshi H, Mikami K, Tanno Y, Sueoka M, Kasahara D, Kimura H, Moro T, Kamiya A, Hozumi K, Inagaki Y.
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Journal Title
Hepatology communications.
Volume: 00
Pages: 1-15
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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