2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞動態解析を指標とした膵癌の新しい転移・増殖因子の探索
Project/Area Number |
15K10201
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
山内 明 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80372431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗林 太 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60251443)
山村 真弘 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70299204)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膵癌 / 走化性 / 癌転移 / 血清因子 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は、最も予後不良の疾患の一つであり、早急かつ効果的な対策を要する。本研究では、膵癌の治療ターゲットとして新たな癌細胞増殖かつ走化性惹起作用をもつ血清因子を探索・同定すること、また、癌細胞株(in vitro)、動物実験(in vivo)および患者においてこのような因子が働くことを証明することを目的としている。 一年目の研究として、まず、in vitroで動態解析を行う方法としてリアルタイム細胞動態解析法(TAXIScan法)を応用し、膵癌細胞株BxPC3、PANC1、MiaPACA2、およびAsPC1で走化能・浸潤能を評価する系を構築した。このうちBxPC3が最も良好な走化性を示し、遊走能のパラメーター(速さ・方向性など)に於いて高い分解能を持っていること、また既存の走化性因子(例:リゾフォスファチジン酸)に対する阻害剤(例:Ki16425)の効果が定量的に評価できることからBxPC3細胞の走化性を指標として、新規走化性惹起因子を探索することにした(本評価系の確立については論文投稿中)。 予備実験において、血清に熱処理を加えてタンパク質を失活させた後でも強い走化性を惹起する現象が観られたことから、目的の因子は主に脂質、糖脂質、低分子物質であることが予測されていた。まず、脂質について、新規走化性因子を探索した。市販の脂質ライブラリーを用いて、脂肪酸80種、プロスタグランジン類似脂質73種について走化性惹起活性をスクリーニングしたところ、脂肪酸2種およびプロスタグランジン類似脂質1種が走化性惹起活性をもつことを見出した(特許出願を検討中のため物質名は伏せさせて頂きます)。これらの物質は走化性惹起活性の報告は見られず、新規走化性惹起物質と考えられた。現在、糖脂質、低分子物質については探索が完了しておらず現在探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年目の研究として、まず、膵癌細胞の走化能・浸潤能を評価する実験系として、本研究に特化した評価系を構築した。血球系を用いた走化性評価法を参考に、膵癌細胞株を用いた走化性アッセイおよび各種走化性パラメーターの定量方法について詳細な検討を行ったために予想よりも時間がかかった。 また、一年目の研究として、血清中の脂質、糖脂質、低分子化合物について、走化性惹起活性検討することを予定した。脂質については、予定していたクロマトグラフィーを用いた血清成分の分画が予想外に難航したため、市販の脂質ライブラリーを用いて、活性のある脂質をスクリーニングする方法に変更した。この方法を用いて研究を遂行したところ、脂肪酸2種およびプロスタグランジン類似脂質1種に走化性惹起活性があることを見出した。 上記のように、走化性評価系の確立と、脂質についての評価に多少の時間がかかったため、糖脂質、低分子物質については探索が完了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
糖脂質、低分子物質について早急にスクリーニングを完了し、新規走化性惹起物質の存在の有無を検討する。 また、見出した新規走化性惹起物質について、細胞増殖活性の有無を検討する。 さらに、予定している動物実験を行う。マウス膵癌細胞株PAN-02 などを用いた膵癌モデルにて、担癌マウスにこれらの物質を投与し、癌組織の反応を検討して、癌増殖促進および癌転移促進作用を確認する。同様に、ヒト癌細胞株とヌードマウスを用いる系においても検討する。また、同因子の中和抗体及び発現抑制(マウスホモログを検討する)により、癌転移が抑制されるか否かを検討する。 最終的には、見出した新規走化性惹起物質について実際の膵癌患者血清中に存在するのかどうかを検討する。患者および健常者より採血後、血清を分離し、質量分析器等を用いて検出する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は主に走化性惹起活性をもつ脂質のスクリーニング作業を行う補助員の謝金として使用させていただいた。設備、消耗品はこれまでの走化性研究において使用していたものをそのまま継続して使用した。そのため、本助成金から設備、消耗品は購入していない。学会発表を研究分担者が行ったが、研究機関内の研究費で賄われたため、本助成金から旅費は使用していない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度未使用額を含めて、交付される予定の助成金は、交付申請時の予定通り消耗品の購入、旅費および実験補助者の謝金として使用させていただきたい。また、引き続き既存の設備を使用するため、設備費の使用予定はない。
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