2015 Fiscal Year Research-status Report
脳腫瘍幹細胞標的型ホウ素ペプチドを用いた新しいホウ素中性子捕捉療法
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15K10333
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
道上 宏之 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20572499)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性脳腫瘍 / ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) / ホウ素製剤 / 細胞膜通過ペプチド / 陽電子放射断層撮影( PET) |
Outline of Annual Research Achievements |
「脳腫瘍幹細胞標的型ホウ素ペプチドを用いた新しいホウ素中性子捕捉療法」 本申請は、「脳腫瘍幹細胞を標的としたホウ素ペプチド開発とホウ素薬物動態評価のためのPET核種開発」に関する研究である。ホウ素中性子捕捉療法は、腫瘍にホウ素を取り込ませ、中性子照射により腫瘍選択的殺傷効果を得る次世代粒子線治療である。膠芽腫に対するBNCT臨床研究が有効とされているが、腫瘍内部へ導入されるホウ素薬剤や腫瘍部におけるホウ素濃度を評価するシステムがない。本研究において、悪性神経膠腫・脳腫瘍幹細胞へ利用可能なペプチドで運搬する新規ホウ素ペプチドの開発ならびにPETによるホウ素ペプチドの薬物動態評価を行う。我々は、先行研究にて細胞膜透過機能を有するペプチド CPP(Cell-penetrating peptide)を複数個のBSHと結合させたmulti-BSH-CPPを作成し、論文作成、特許取得を行った(Michiue H. et al., Biomaterials 2014, 35(10):3396-405, 「細胞透過型ホウ素ペプチド」2011年10月19日出願、特願2011-230059)。本申請で行う研究は、このホウ素ペプチドを(BSH-CPP)を臨床応用へ向けて、さらに臨床応用へ向けたホウ素製剤へ向けて発展させいくことである。 具体的には、下記の項目を満たすホウ素製剤開発を行った。項目①腫瘍内部への取り込み能を有することを確認、②容易な合成方法で作成できることを確認 ③毒性がない安全な化合物であることを確認 ④腫瘍細胞特異的に導入される事を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.本研究は、薬剤開発に関する研究である。BSH-CPPを中心に薬剤機能の確認を行っている。 a) 3つのアミノ酸のアルギニンをBSHに結合させたホウ素化合物BSH-3Rの開発に成功した。BSH-3Rは従来のBSH-CPPと比較して、合成上非常に簡便に合成されるため、将来的な臨床応用を考慮して理想的な薬剤といえる。 b)BSH-3Rは腫瘍内部への取り込み能を有しており、さらに時間経過により、核へと導入される。BNCTにおいては、先行研究の結果より、細胞内へと導入されない場合(細胞外膜に存在する場合)と核内へと導入される場合では、その効果は100~1000倍程度増強するといわれているため、本薬剤の効果は非常に高く、求めていた達成度をはるかに上回るものである。 c)種々の細胞株へ投与し、毒性を精査するも、BSH-3Rの投与濃度を変化させても、BSH投与と同じ増殖指数を示した。以上より、本薬剤の、毒性はないものと考える。 d)本薬剤の動物における薬物動態評価を行うために、金属キレーター(DOTA:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)及び放射線各種64Cuを用いた、BSH-3R-DOTA-64CuのPET用プローブを作成した。また、比較するBSHの薬物動態を評価するために、BSH-DOTA-64Cuも同時に作成した。BSH-3R-DOTA-64Cuは、マウス脳腫瘍モデルを用いた検証において、腫瘍/正常脳比が、8.1を示し、BSHの2.8と比較して、非常に高い腫瘍特異性を示した。この薬物動態評価は、腫瘍部の組織を採取してホウ素濃度を測定した結果の腫瘍/正常脳比7.1とほぼ同じ値を示した。このBSH-3R用ホウ素PETプローブは、今後のBNCTにおいて非常に理想的なPETプローブになると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
「腫瘍細胞特異性、特に腫瘍幹細胞特異的導入に関する評価とメカニズムの解析」 脳腫瘍幹細胞は、腫瘍再発における大きな要因であるが、脳腫瘍幹細胞を標的化し、これを殺傷する治療法の開発はこれまでに行われていない。BNCTは、10Bホウ素原子と中性子により発生するアルファ崩壊を用いた、物理学的な力学により腫瘍を殺傷する治療法である。腫瘍幹細胞内へホウ素を導入できれば、腫瘍幹細胞を選択的にBNCTにより破壊することも可能である。しかしながら、腫瘍幹細胞は、分裂能が低く、従来のアミノ酸ホウ素製剤(BPA)の取り込み能が低いと報告されている。今後の実験の指針としては、下記の4項目である。 1.人及びマウスの脳腫瘍幹細胞を数種類樹立する 2.様々な異なる環境下(通常酸素環境、低酸素環境など)における細胞の形態の変化の評価 3.人及びマウス脳腫瘍幹細胞に対してBSH-3Rを導入し、細胞内局在及び細胞内ホウ素濃度の測定を行う 4.BSH-3Rの腫瘍及び腫瘍幹細胞への導入機序についての研究を推進
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Causes of Carryover |
プロジェクトが非常に順調に遂行され、本研究結果が論文作成に至った。 プロジェクト遂行に予定していた動物モデル用のマウスが、非常に順調にプロジェクトが遂行されたため、当初予定していたよりも、やや少ない匹数で、結果を得た。 今後のプロジェクトの継続のために、繰り越しを行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰り越し予算により、免疫染色用試薬の購入、並びに動物モデル用のマウスの購入、培養細胞関連試薬の購入を行う予定である。
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[Journal Article] Detection of γH2AX foci in mouse normal brain and brain tumor after boron neutron capture therapy.2016
Author(s)
Kondo N, Michiue H, Sakurai Y, Tanaka H, Nakagawa Y, Watanabe T, Narabayashi M, Kinashi Y, Suzuki M, Masunaga S, Ono K.
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Journal Title
Rep Pract Oncol Radiother
Volume: 21(2):
Pages: 108-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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