2015 Fiscal Year Research-status Report
顔面けいれんの分析による脳神経の脆弱性予測および脳神経機能障害の治療法の開発
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15K10370
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
小林 正人 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60245511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤巻 高光 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80251255)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | facial spasm / neuroprotection / brain stem / facial nerve palsy |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は顔面けいれん患者を対象とし、その術前後の神経機能を検討して脳神経の機能障害の経過およびその原因を解明することを目的としている。顔面けいれんでは血管圧迫による顔面神経の過剰興奮を認めるが機能的にはほぼ正常であり、隣接する聴神経の機能も正常である。術後には過剰興奮の改善と共に、術中操作による神経機能障害が一過性に出現し、改善してゆく。本研究は、顔面神経と聴神経を脳神経の運動神経および感覚神経のモデルとし、手術操作、高血圧や糖尿病などの基礎疾患、MRIによる神経の解剖学的特徴など、脳神経の機能に影響を与える因子を検討するものである。 本年は、約70名の手術があり、その全例で術中に調整脳幹誘発反応を記録した。また、患者の基礎疾患(高血圧や糖尿病など)を検討した。また、頭部MRIを撮像し、拡散協調画像により顔面神経のtensor imageの描出や顔面神経と圧迫血管の解剖学的関係の三次元画像により立体的に描出する試みを行ってきた。 本年までの試みでは、顔面神経をtensor imageで描出するのは全例では困難であり、顔面神経のtensor imageと術後の神経障害の関連は明らかでない。患者の基礎疾患では、高血圧や糖尿病患者の罹患率が健常人よりむしろ少ないことが明らかとなった。また、椎骨動脈により、大きく脳幹部が圧迫されている患者では術後に一過性の顔面神経麻痺が生じやすいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年目、すべての患者において聴神経のデータは集積しえた。また、既往歴や術後の顔面神経麻痺の出現の有無やその時期、また各患者の既往歴や動脈硬化の指標となるCAVIのデータについても記録はしえた。 しかし、tensor imageによる顔面神経の描出が予想に反して困難であり、十分な解析に耐えるだけのデータは現時点では集まっていない。三次元構成のソフトウェアは入手し、今後の解析につなげる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に画像データの解析に注力し、術前の拡散協調画像の撮像条件を変更して工夫を行ってゆく。また、術中の顔面神経の直接刺激により顔面神経機能を術中にも評価し、その結果と顔面神経の機能障害の関連について評価する。 また、聴神経および顔面神経の機能の保護および改善のために人工髄液の効果について検討を開始する。人工髄液はヒトの脳脊髄液の同様のpHに保たれ、マグネシウムイオンなど神経保護に有用とされる電解質が含まれている。術中にこれを使用した際の顔面神経や聴神経の電気生理学的変化について検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、術中の聴覚のモニターである聴性脳幹誘発反応はほぼ予定通りに記録可能であったが、顔面神経および顔面表情筋の電気生理学的検査の記録については術中のartifactやノイズが大きく、十分に記録できなかった例が散見された。このため、刺激および記録電極の消費が予想外に少なく、電極の購入費が抑制された。また、MRIのデータについても、拡散協調画像によるtensor imageの描出が全例では取得できず、データ保存用のhard diskの購入費も抑制された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は術中に使用する電極を昨年以上に必要となる見込みであり、画像解析のためのhard diskも購入する予定である。よって昨年以上にこうした消耗品のための費用が必要となる。 これまで得られた知見について、積極的に国際学会などで発表し、論文作成する予定であり、これらにも研究費を使用することになる見込みである。
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Research Products
(2 results)