2015 Fiscal Year Research-status Report
骨転移患者QOL規定因子の同定とキャンサーボード至適介入方法の確立
Project/Area Number |
15K10388
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠田 裕介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80456110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松平 浩 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10302697)
澤田 良子 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (30648308)
岩瀬 哲 東京大学, 医科学研究所, 講師 (60372372)
芳賀 信彦 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80251263)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん / 骨転移 / ADL / QOL / キャンサーボード / 転移性骨腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
当院では、骨転移診療の標準化を目的として2012年5月に骨転移キャンサーボード(CB)を設立し、整形外科医を中心として、リハビリテーション科や緩和ケア診療部、放射線科、地域医療連携部などを含めた多職種・多診療科による横断的運動器診療体制を確立した。骨転移患者全員を対象とし、ADL・QOLの維持・改善を目的とした包括的な運動器管理を実践している。 本研究は、がん患者における運動器管理の有効性と必要性の実証を目的とする。CBで診療している骨転移患者へのアンケートと診療データをもとに①QOL実態調査、②QOL規定因子の同定を行う。具体的なQOL 尺度としてEQ-5D、EORTC QLQ-C15-PAL(PAL15)、EORTC QLQ-BM22(BM22)、心理社会的要因の評価尺度のgeneric screening tool、うつ評価尺度のK6、疼痛評価尺度のNRSを用いて評価した。続いてCB介入後2-4週時点で再調査を行い③骨転移CB介入がQOL改善に及ぼす効果を明らかにし、至適介入方法を確立する。その結果をふまえ、日本の骨転移診療体制及び教育体制を見直し、骨転移診療の標準化を目指す。 平成27年度は、骨転移CBに登録された骨転移患者約100例弱に対して介入時にQOL調査票を記入してもらい回収した。また、患者の身体情報や既往歴、ADL、全身状態、採血データ、予後、骨転移の状態などに関するデータを収集した。骨転移CB介入後2-4週の時点で2回目用のアンケート記入も記入可能な患者に対して行ったが、1回目の患者の半数以下の回収率であった。我々は年間平均180症例の骨転移患者に介入しており、今後もアンケートの回収を継続して行う方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年4月以降に骨転移CBにて介入した骨転移患者数は190例であった。この患者を対象とし、下記調査を行った。 ①骨転移患者の背景因子の調査 患者の基本情報として、年齢、性別、身長、体重、BMI、既往歴を調査、計測した。次に、生活習慣、生活環境などのデータをアンケート形式で調査した。具体的には、下記②と一緒に1冊にまとめてアンケート冊子として患者に渡して記入を依頼した。具体的な質問項目としては、睡眠時間、運動習慣、喫煙歴、最終学歴、職業、婚姻状況、同居家族の有無などを選択方式で記入している。 ②骨転移患者のQOLの実態調査 ①と同時に、患者立脚型のQOL調査を行った。具体的には、健康関連QOL評価尺度であるEQ-5D、EORTCにより作成された包括的QOL評価尺度であるQLQ-PAL15および骨転移患者のQOL評価尺度であるEORTC QLQ-BM22、うつ状態の評価尺度であるK6、心理社会的要因の評価尺度であるGeneric screening toolの調査を行った。 ③骨転移患者の診療データの収集 介入時のADL(Barthel IndexとECOG Performance Status)、全身状態(がんの種類、内臓転移の有無、化学療法既往の有無、骨転移数、採血データ)、骨代謝マーカー(ALP, 尿中NTx, ICTP, BAP)、骨転移の状態(性状、部位、骨関連事象の有無、骨修飾薬の使用歴有無)を調査した。 ④骨転移CB介入後のデータ収集 骨転移CB介入後に、再度②の調査の一部を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は、これまでのアンケート調査の継続とともに、下記研究を行う予定である。①骨転移患者のQOLの特徴の解析 分担研究者である松平は、これまでに腰痛の原因を明らかにするための研究で、EQ-5Dおよびgeneric screening toolの一般日本人のデータを大量に保有している。また、岩瀬はこれまでに緩和ケア診療部で収集したEORTC QLQ-PAL15のデータを保有している。これらのデータと、今回新たに収集した骨転移患者のQOLデータ、岩瀬らが収集した新しい骨転移のない担がん患者のQOLデータを、SPSSを用いて解析し、各下位尺度に有意差があるかを検討する。この作業により、骨転移の患者のQOLを妨げているものが何かが、患者ベースで明らかになる。 ②骨転移患者のQOLを規定する因子の解析 EQ-5Dを目的変数として、これらに影響を及ぼす説明因子を、SPSSを用いて単変量および多変量で解析する。この結果により、骨転移CBで介入すべきポイントを明らかにする。 ③骨転移CB介入の効果を解析する 骨転移CB介入前後のEQ-5DやBM-22のデータを比較し、各下位尺度に有意差があるかを検討する。介入によりこれらのデータの改善が得られた場合、それを説明する変数があるかを検討することで、骨転移患者に対する至適介入方法を検討する。 成果発表として、国内では日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会、日本癌治療学会、日本緩和医療学会での発表を予定している。また、海外では米国整形外科学会、国際患肢温存学会(ISOLS)、アジア太平洋骨軟部腫瘍学会(APMSTS)の学術集会での発表を予定している。なお、研究結果は査読のある海外の雑誌に論文として投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費や印刷代、物品費、諸経費が予定よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に、印刷費や論文投稿費、解析等で余剰金を使用予定。
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