2017 Fiscal Year Research-status Report
水溶性αリポ酸誘導体の脳保護効果と抗酸化能:スピン共鳴解析による検討
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15K10515
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
徳丸 治 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (40360151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 敬明 大分大学, 医学部, 教授 (20211196)
新宮 千尋 大分大学, 医学部, 准教授 (30295191)
松本 重清 大分大学, 医学部, 准教授 (90274761)
江島 伸興 京都大学, 高大接続・入試センター, 特定教授 (20203630)
西田 育弘 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生理学, 教授 (90172668)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗酸化能 / スピン共鳴解析 / フリーラジカル消去能 / 水溶性αリポ酸誘導体 / 核磁気共鳴法 / 電子スピン共鳴法 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳虚血等の脳障害に対する脳保護療法は,低体温療法以外にはまだ十分有効な治療法が存在せず,新しい治療法が模索されている。αリポ酸に抗酸化作用や抗炎症作用があることは従来からよく知られているが,その脂溶性のために臨床での使用方法が限定されていた。大分大学ではαリポ酸とさまざまなアミノ酸との複合体を合成し,水溶性αリポ酸誘導体を共同開発した。しかし,その詳細な作用機序はまだ不明である。本研究は脳虚血―再灌流傷害に対する水溶性αリポ酸誘導体の脳保護効果とその機序を,スピン解析,即ち核磁気共鳴法(NMR)および電子スピン共鳴(ESR)を用いて,エネルギー代謝および抗酸化作用,特にフリーラジカル消去能の観点から,網羅的に明らかにするとともに,質量分析イメージングの手法を用いて脳組織内の分布を可視化することを目的として実施中である。 これまでに, ESRによるαリポ酸誘導体の直接的なラジカル消去能の検証は,計画通りに完了しさまざまなフリーラジカル種に対する消去能のプロファイルが得られた。また,質量分析イメージングによる脳組織内の高エネルギーリン酸化合物の分布の可視化の手技を改良し,海馬の部位毎のエネルギー状態を高空間分解能で解析することが可能となった。NMR分光法を用いたNMRメタボロミクスでの解析に必要な試料の前処理と使用するパルスプログラムの選定を完了した。当初,本課題は3年間で完了する予定であったが,改良した質量分析イメージングの解析手法に関して国際学会で発表するために,研究期間を1年間延長することが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7種類のαリポ酸誘導体のフリーラジカル消去能を電子スピン共鳴法によって評価した。7種類全てのαリポ酸誘導体は,ヒドロキシルラジカル,スーパーオキサイドアニオン,3級ブチルペルオキシルラジカル等の酸素中心ラジカル,NOやDPPHといった窒素中心ラジカルに対して消去能を示した。 質量分析イメージングによる脳エネルギー代謝の評価は,小型遠心機による物理的な脳虚血再灌流モデルを用いて実施した。高エネルギーリン酸の状態を変化させずに代謝を瞬時に停止させて脳スライス標本を作成する技術をさらに改良した。データ解析の方法を見直し,データ解析法を改良したことによって,海馬の部位毎にそのエネルギー状態を詳細に比較評価することが可能となった。 リンを観測核とする核磁気共鳴法による脳エネルギー代謝の解析は,当初使用する予定だったNMR分光器の不調のため,脳組織内の高エネルギーリン酸の経時的評価を十分に行うことができなかった。これに代わって,本学工学部が保有するNMR分光器を用いて,脳組織の1H-NMRメタボロミクスを行う予備実験を実施した。試料の前処理の手順を確立し,さまざまなパルスプログラムを比較し,測定に用いるのに最も適するパルスプログラムを選定した。最終的な解析手法を現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
電子スピン共鳴法によるαリポ酸誘導体のラジカル消去能の網羅的解析について,現在,論文執筆中である。 質量分析イメージングによるエネルギー状態の可視化に関して,平成30年度に国際学会で発表を行う予定である。 NMRメタボロミクス解析は,解析法の確立を継続中である。
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Causes of Carryover |
平成30年度に課題に関連する発表を国際学会にて行うため,研究期間を延長し旅費相当額を繰り越した。
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