2015 Fiscal Year Research-status Report
分子生物学プロファイリングによる膀胱上皮内癌治療効果と予後予測マーカーの探索
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15K10605
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
藤本 清秀 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50264867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千原 良友 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40405395)
三宅 牧人 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80601400)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膀胱上皮内癌 / DNAメチル化 / 上皮間葉転換 / 血管新生因子 / 免疫応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
膀胱上皮内癌症例の臨床病理学的データを集積し、検体試料の採取を行い、治療抵抗性に関連する候補遺伝子の解析を行っている。上皮間葉転換と血管新生関連遺伝子群のDNAメチル化異常、遺伝子発現、ならびにBCG処理と遺伝子群の変化を解析した。 1) 蛍光膀胱鏡使用下での膀胱上皮内癌組織と治療後の経時的尿試料の採取:蛍光膀胱鏡(光力学診断システム)による内視鏡切除術を施行した膀胱癌20症例の尿および膀胱癌組織を採取している。さらに術後経時的に尿を採取し、再発時には初回手術時と同様に尿と癌組織を採取している。既に上皮内癌については前向きに8症例から尿と組織を採取した。2) 治療後経時的尿を対象とした網羅的DNAメチル化プロファイリング:膀胱癌患者、膀胱癌切除後患者および健常者の尿と膀胱組織を対象にDNAメチル化プロファイリング解析を行い、unsupervisedクラスタリング解析から特異的なDNAメチル化プロファイルを作成し、膀胱癌の再発の原因となるエピジェネティックフィールド効果を確認した。3) 膀胱上皮内癌に特異的に生じるEMTと血管新生関連遺伝子群のDNAメチル化異常の網羅的解析:BCG膀注療法を施行した膀胱上皮内癌を対象に、治療抵抗性に関与する因子としてtight junctionマーカーであるclaudin (CLDN) 1とCLDN 4、間葉系マーカーであるvimentin、さらに癌幹細胞マーカーであるOCT3/4の発現を評価し、OCT3/4発現がBCG膀注療法抵抗性に関与することを確認した。 また、膀胱全摘86例の標本を用いてCLDN4の発現が局所浸潤や転移に関連することを確認し、抗ヒトCLDN4モノクローナル抗体による細胞増殖・浸潤能の抑制、アポトーシスの誘導、細胞透過性の亢進、さらに抗癌剤の抗腫瘍効果に上乗せ効果を確認した(論文投稿受理)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前向き研究の検体採取には、もう少し時間を要すると思われるが、概ね予定の研究は進行している。関連研究として、膀胱上皮内癌における抗老化蛋白Klotho(KL)の意義についても検討しており、筋層非浸潤性膀胱癌 155例の免疫組織染色の結果から、再発および進展予後との関連を解析した。KLβ発現は随伴上皮内癌、間質浸潤(T1)、high grade、脈管侵襲と関連しており、随伴上皮内癌、T1/high grade、脈管侵襲陽性が進展予測因子となり、多変量解析ではKLβ 高発現のみが独立した進展予測因子であること、さらにKLβ は膀胱癌細胞の増殖能、浸潤能、血管内皮細胞透過遊走能を亢進させ、足場非依存性増殖能獲得にも関与していることを明らかにした(論文投稿受理)。また、in vivoモデルを用いたBCG処理による遺伝子変化の検討を既に進めている。BBN誘発マウス膀胱癌モデルにおいてBCGおよび各種抗癌剤の膀注療法により惹起される免疫細胞誘導と全身および局所のサイトカイン誘導について検討した。BCG膀注療法ではCD4、CD8、CD56が誘導されるが、CD204、制御性 T cell、PD-L1は抑制されず治療抵抗性に関連することが示され、一方、抗癌剤のマイトマイシンではCD56、CD204、Foxp3は抑制された。サイトカインは、BCGはIL-1A、IL-l2、IL-17Aを誘導し、マイトマイシンはIL-4、IL-17Aを誘導するなど、薬剤により誘導する免疫応答が異なることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
関連施設の検体提供の協力を得て、前向き解析の対象症例数を増やす。Illumina assayでは受託解析が可能であるがコストは高く、コストを抑制するためには新規性に乏しくなるがメチル化PCRアレイを使用する方法も検討する。さらに前向き研究として、採取した上皮内癌症例のうちBCG膀注療法奏効例および抵抗例の尿試料を用いて網羅的解析を継続して行う。現時点で、膀胱上皮内癌におけるOCT3/4 は BCG膀注療法の効果を予測するマーカーとなる可能性が示唆され、KLβについても分子メカニズムもさらに解析し、上皮内癌の新規治療ターゲットとしての可能性を追求していく。
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Causes of Carryover |
当初計画では物品費として1,784,000円計上していたが、解析対象症例が予定数を下回ったため、若干の研究消耗品の余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は関連施設の協力を得て、体積対象症例をさらに増やして前向き研究を進める予定である。症例の解析方法について、コスト面を勘案しつつ最善の方法を模索・検討し、さらに多くの症例を検証する物品の購入に使用する予定である。昨年の未使用金については、現段階での中間研究成果を意欲的に発表するための旅費に充当する予定をしている。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Pro-chemotherapeutic effects of antibody against extracellular domain of claudin-4 in bladder cancer2015
Author(s)
Masaomi Kuwada, Yoshitomo Chihara, Yi Luo, Xiangru Li, Yukiko Nishiguchi, Rina Fujiwara, Takamistu Sasaki, Kiyomu Fujii, Hitoshi Ohmori, Kiyohide Fujimoto, Masuo Kondoh, Hiroki Kuniyasu
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Journal Title
Cancer Letters
Volume: 369
Pages: 212-221
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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