Outline of Annual Research Achievements |
多嚢胞性卵巣症候群(poly cystic ovary syndrome : PCOS)は、女性の3~5%、月経不順患者の7割以上を占め、生活習慣病のリスクも高い重要な症候群である。近年、血中抗ミュラー管ホルモン(AMH)濃度の測定が可能となり、PCOSでは血中AMH濃度が高いことが指摘されている。本研究はPCOSの診断基準の改善のため、AMHとインスリン抵抗性の意義を検討することを目的とし、平成28年度は、PCOS患者の血中AMH値を規定している因子について検討した。 PCOSの病態を形成する因子として、多項目を網羅的に抽出し、LH,FSH,LH/FSH,テストステロン,アンドロステンジオンDHEAS,DHEA,E1,E2,E1/E2,インスリン,血糖,HOMA-IR,Tg,LDLコレステロール,血圧(収縮期・拡張期)OVPO(平均卵巣体積),月経異常の重症度(無排卵月経、奇発月経、無月経),多毛の有無,ニキビの有無,ウエスト,ヒップ,ウエスト/ヒップ,BMI,体脂肪率を検討の対象とし、これらの臨床情報をPCOS患者114名の診療録から抽出し、血中AMH値との相関を検討した。相関関係の有無は 、正規性と分散を考慮の上、スピアマンの順位相関係数検定、ピアソンの相関係数の検定を行い有意な相関がみられた因子を抽出した。その結果、最も相関が強かった因子は平均卵巣体積(OVPO)であり、相関係数はr=0.618であった。また、LH、LH/FSH比、テストステロン(T)、遊離T、アンドロステンジオン、TG、LDLコレステロール、ニキビの有無、身長、体重、BMI にも有意な相関があった。一方、インスリン抵抗性に関する各因子や副腎性アンドロゲンはAMHとの相関が無かった。PCOS患者ではAMHとインスリン抵抗性、年齢との相関が有意ではなく、卵巣体積等の因子がPCOS患者の血中AMHを規定していることを明らかにした。
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