2017 Fiscal Year Research-status Report
精巣特異的PKCデルタKOマウスを用いて男性不妊・不育の原因を探る
Project/Area Number |
15K10689
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
新野 由子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (60398683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 潔 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主任研究員 (70233492)
多屋 長治 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 室長 (90175456)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PKCdelta / ノックアウトマウス / 発生 / 胎児死亡 / 不育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年に科研費を受けて作出した、オスの精原細胞、精母細胞、精子細胞でPKCデルタ遺伝子を欠失するマウス(RBRC06463/理研に寄託済み)の研究を行っているが、本研究費を受ける前に行った研究では、このヘテロタイプ同士の交配からホモノックアウトマウスは産まれてこなかった。しかし、本研究費を受けて研究を継続した結果、PKCデルタ遺伝子をヘテロに持つ親から生まれたのは、野生型(WT):ヘテロ(He):ホモノックアウト(Ho)=60:145:7であった。Heの親から産まれた仔マウス全212匹中、Hoは7匹生まれ、それは全体の3.3%に相当することがわかった。 出産前のどの段階でHoマウスが成長を止めるのか、PKCデルタ遺伝子をヘテロの持つ親同士を交配し胎生12日目(E12)の胎児を解析した。母マウス6個体で合計59の胎嚢が観察され、胎児の遺伝子解析から着床した胎児数とその割合は以下であった。WT:He:Ho=11 (18.7%):34 (57.6%):13 (22.0%)。メンデルの法則に従えば、WTとHoの割合は本来25%であるところ、20%前後だったがこれは実験誤差の範囲内であると思われる。しかし、この胎児の中にはすでに死亡して吸収されている個体もあった。E12の時点で生存胎児の割合は、WT:He:Ho=8 (17.8%):33 (73.3%):4 (8.9%)であった。。 さらに1匹のHe母マウス胎児をE16で確認したところ、WT:He:Ho=4:4:0であり、この時点でHo胎児は存在していなかった。このことから、受精卵の着床そのものはほぼメンデルの法則に則っていると言えるが、Hoマウスはその後の発生には大きな問題があると言える。 また、WTとHoのオスマウスの精子を調整し、WTメスマウスの卵子と受精実験を行ったところ、2細胞胚に到達するまでの発生に特に差異は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、初年度、本マウスを理研より受け取ったのは11月で、最初の仔マウスが産まれたのは12月だったことから、マウスの繁殖に時間がかかっており予定より遅れている。当初、PKCデルタヘテロノックアウトマウス(He)から、ホモノックアウトマウス(Ho)は産まれないと仮定していたが、本来25%は産まれてくるはずのHoマウスが約3.3%しか産まれてこないことを明らかにした。 また、胎生12日胚の遺伝子型を確認したところ約22%のHo胚が存在していたが、この時点ですでに死んでいる胚も多く、生存胚は8.9%であった。これはHoマウスの出生個体の割合(3.3%)より多い。つまり、Hoマウスはほぼメンデルの法則に合った数子宮に着床するが、メス体内での胚発生時に死亡し、最終的には3.3%は産まれてくるということになる。 WTとHoのオスから採取した精子を用いた発生実験から、2細胞期までの受精卵の発生には差は見られず、E12においてHo胎児の胎嚢が22%存在することから、PKCデルタ遺伝子の欠損は受精卵の着床から出産までの発生時に重要な機能を持つことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
PKCデルタ遺伝子を欠損すしても、受精卵の着床までは進むことがわかった。しかし、妊娠中に胎児が死亡していくことも明らかになった。元々ホモノックアウトマウスは産まれてきても長く生存できない場合が多く、発生のみならず生存にも何らかの問題を抱えている可能性がある。以上のことから、PKCデルタ分子は体内各組織の形成と恒常性の維持にに関与している可能性があると考えている。 それを知るために、今後産まれてきたホモノックアウトマウスの組織学的解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究に使用するPKCデルタヘテロKOマウスは理化学研究所(理研BRC)から購入したが、初年度平成27年11月19日にマウスが搬入され、最初の仔マウスが産まれたのが12月下旬だったことから研究の開始が遅れている。その後、出生マウスの遺伝子型確認のために必要なマウスの繁殖と胎児の解析必要な妊娠マウスを得ることにも時間がかかったため、やや遅れている。。 PKCデルタホモノックアウトマウス(Ho)は生まれてはくるものの、全出生個体のうち本来であれば約25%産まれてくるはずのところ、約3.3%という少なさである。この理由を知るためにこのHoマウスの各組織解析を行う予定である。また論文作成のため、野生型マウスでのPKCデルタ分子の発現タンパク質の検出も行う予定である。
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Research Products
(1 results)