2016 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌局所免疫解析に基づくテーラーメイド免疫療法の開発
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15K10714
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 清住 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90335026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶山 広明 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (00345886)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 腹膜播種 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画内、臨床研究において、卵巣明細胞腺がんのGlypican3(GPC3)ペプチドワクチン臨床試験の新規登録は終了し、昨年度に引き続き、データ解析を行った。進行群32例中6回以上のワクチン投与が可能であった症例は13例であり、3例がPR(Partial Response)、残りの患者はPD(Progressive disease)であった。臨床的効果が得られた3例の臨床データおよび免疫学データの解析結果から、HLA発現の強度が効果良好に関与している可能性が示唆された。GPC3の発現の強度と臨床効果には関連は認められなかった。今後は患者血清中のGPC3をELISAにて測定し、予後との関連を検討する。動物実験においてはマウス卵巣癌細胞HM-1をマウス腹腔内移植し、繰り返し行うことによって樹立した高播種能獲得細胞(HM-1-6)を樹立し、親株との間でサイトカインアレイを施行した結果、IL-33の発現が亢進していることが解り、IL-33の発現ベクターを作製し、HM-1各細胞に遺伝子導入行った(HM-1-IL-33+)。また、IL-33のshRNA導入細胞株の樹立を行い(HM-1-IL-33-)、上記の4種類の細胞株をマウス腹腔内に投与し、腹水量、播種腫瘍重量、生存期間を検討した。その結果、IL-33は播種形成を促進する傾向を認め、腫瘍局所におけるリンパ球の浸潤促進効果を認めた。マクロファージの浸潤には4群間で差を認めなかった。HM-1にVEGF発現ベクターを遺伝子導入したHM-1-VEGFも樹立を行い、コントロール株と腹膜播種形成能を比較検討し、HM-1-VEGFが有意に腹膜播種形成を促進し、腹水貯留も有意に増加することを見出した。以上の結果から卵巣癌腹膜播種の免疫寛容にIL-33およびVEGFが関与していることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画内の、臨床研究の卵巣明細胞腺がんのGlypican3(GPC3)ペプチドワクチン臨床試験のデータ解析はほぼ終了し、現在は寛解群の2年後の予後調査の結果の解析を行っている。この解析結果により、GPC3ペプチドワクチンの再発予防効果の有無についての結論が得られる予定である。患者血清を用いた効果判定因子の同定結果としてはアルブミン低値が効果不良に関与している可能性が示唆されるデータであるが、今後追加検討を要すると考えている。GPC3のELISA測定も計画しているが、現在ESILA法の精度の確認を行っており、実際の計測が少し遅れている。動物実験において、計画はほぼ予定どおり進行している。IL-33の発現ベクターを作製し、HM-1各細胞に遺伝子導入行った(HM-1-IL-33+とIL-33のshRNA導入細胞株の樹立を行い(HM-1-IL-33-)、上記の4種類の細胞株をマウス腹腔内に移植し、腹水量、播種腫瘍重量、生存期間を検討し、IL-33は播種形成を促進する傾向を認め、腫瘍局所におけるリンパ球の浸潤促進効果を認めた。また、HM-1にVEGF発現ベクターを遺伝子導入したHM-1-VEGFも樹立を行い、コントロール株とに腹膜播種形成能を比較検討し、HM-1-VEGFが有意に腹膜播種形成を促進し、腹水貯留も有意に増加することを検出した。以上の結果から次年度のbevacizumabを併用したペプチドワクチン療法の前臨床試験は予定どおり施行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における我々の最終目標は卵巣癌腹膜播種をターゲットとした癌ワクチン療法と免疫逃避メカニズムに対する分子標的治療との併用による新規複合的免疫療法の開発である。これまで行ったペプチドワクチンの臨床試験の結果から進行症例の再発予防効果についてはリンパ節再発の予防には有効である可能性が示唆されたが、腹膜播種再発の予防効果が今後の課題であり、腹膜播種を対象とした複合的免疫療法の開発を指向してターゲット因子の探索を行った。その結果、VEGFに加えてIL-33がターゲット候補となった。前臨床試験としてHM-1の腹膜播種モデルに対し、GPC3 ペプチドワクチンとbevacizumab 併用効果を検討、その後倫理員会の承認を得てbevacizumab 併用GPC3ペプチドワクチン療法の臨床試験を開始する予定である。また、本年度の研究計画において臨床試験にて得られた腫瘍検体に浸潤した腫瘍浸潤リンパ球 (Tumor Infiltrating Lymphocytes: TIL)の分離を行っており、TILが遺伝子変異に由来するペプチド、あるいはがん細胞固有の自己抗原由来のペプチドを認識しているかどうかを基礎研究により検証する内容の追加を行う。婦人科がんにおいても患者毎に遺伝子変異の種類や数は多様であると考えられ、ターゲットを絞った治療よりも、もともとがん組織中のがん細胞由来の様々な抗原を認識できていたTIL細胞の集団を増殖活性化して投与する方がより高い抗腫瘍効果を得られる可能性がある。このTILを用いた細胞免疫療法にbevacizumab を併用する前臨床試験を追加検討している。
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