2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10947
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
武田 啓 北里大学, 医学部, 教授 (20197297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内沼 栄樹 北里大学, 医学部, 名誉教授 (90146465)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 知覚 / 神経因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病性の足病変などでは、知覚が低下するために警告が働かずに創傷が悪化してしまう。一方で長い期間発せられた痛みは神経回路を可塑的に変化させ、痛みを複雑なものにする。局所での神経因子の動態もそれによって変化し、創傷治癒に影響していると考えられる。本研究では、体表の知覚異常や慢性疼痛が皮膚の創傷治癒に及ぼす影響を、神経因子の動態を評価することで明らかにする。 現在までのラットを用いた研究において脊髄後根切断による脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討した。実験の内容については医学部動物実験委員会に申請し承認を得ている。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。これらの動物モデルの安定した作成条件を得た。創傷治癒課程を経時的に創傷部位の面積を計測、組織を採取しHE染色組織標本から計測を行い上皮化率、収縮率を算定した。Substance Pおよびその受容体であるNeurokinin-1受容体の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRによる評価を行った。創傷作成時から治癒までの期間を時系列で採取した組織より、Substance Pの免疫染色をおこなった。また、VEGFR1、R2について免疫染色およびRealtime-PCRを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット脊髄後根切断による脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討した。知覚障害動物モデルについては安定した作成条件を得ており、創傷治癒課程を経時的に評価できた。Substance PおよびNeurokinin-1受容体の各遺伝子の創傷部における発現変動を評価した。創傷作成時から治癒まで時系列で採取した組織より、Substance Pの免疫染色をおこなった。また、VEGFR1、R2について免疫染色およびRealtime-PCRを行った。これらの条件設定にやや検討を要しているが、おおむね順調に進展してしていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、知覚神経異常の存在下では皮膚創傷の治癒が遅延しているのではないかという仮説を検証している。創傷治癒の評価はこれまでに私たちが報告した皮膚全層欠損創に対する創傷治癒評価法を用いている。治癒課程は、標本から創収縮率、ならびに上皮化率を定量化することで、創傷が治癒に至る経過を経時的に評価できる。また組織学的には、さらに炎症細胞浸潤の定量をおこなうことで評価する。さらに創傷の局所での痛みに関与する神経ペプチド、特に創傷治癒にも関連することが報告されている神経因子並びに動態とVEGFとその受容体についても解析する。ノックアウトマウスの使用について検討している。
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Causes of Carryover |
動物での創傷治癒モデルの作成の安定化と神経因子やVEGFの受容体についての免疫染色での条件設定に予定より時間を要していたため、当該年度での動物実験の数を減らした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験の個体数を十分確保するため、初年度の予定数を繰り越した研究費で行う予定である。また、追加でおこなう免疫染色の条件設定のための試薬の購入に用いる予定である。ラットで十分な結果が得られない場合ノックアウトマウスの使用も検討している。
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