2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10947
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
武田 啓 北里大学, 医学部, 教授 (20197297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内沼 栄樹 北里大学, 医学部, 名誉教授 (90146465)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 知覚 / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病性などでは、知覚が低下するために警告が働かずに創傷が悪化してしまう。一方で長い期間発せられた痛みは神経回路を可塑的に変化させ、痛みを複雑なものにする。局所での神経因子の動態もそれによって変化し、創傷治癒に影響していると考えられる。本研究では、体表の知覚異常や慢性疼痛が皮膚の創傷治癒に及ぼす影響を、神経因子の動態を評価することで明らかにする。創傷治癒においては、患者のためには痛みを取り除くことは重要だが、創傷治癒を遷延させないことが同時に必要である。創傷治癒過程においては、知覚神経活動がどのように関わっているのか?痛み-慢性痛は創傷治癒を遷延させる因子なのか?あるいは早期の創傷治癒のためには痛みを伴うことが重要なのか?この視点で行われた研究はない。また、がんの痛みに限らず、痛みの放置はさらに痛みを招来することから早期の疼痛緩和ケアが推進されている。創傷における痛みはがんとは違ったものではあるが、早期からの痛み解放を目的とする意味では同類である。これまで知覚神経の選択的障害モデルなどを用いて、知覚異常が体表の創傷治癒に影響を及ぼすことを確認してきた。 ラット脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討してきた。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。動物モデルでは安定した作成条件を得た。昨年度は動物実験の個体を増やして解析を行った。7日目の創傷部位の組織を採取しHE染色組織標本から計測を行い上皮化率、収縮率を算定した。さらにHGF、b-FGF、PDGF、VEGFなど約10種類の創傷治癒関連因子の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRで評価したが、有意差が得られていない。そのための追加実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。動物モデルでは安定した作成条件を得ることができおおむね順調に進展したが、動物実験の個体を増やしてHGF、b-FGF、PDGF、VEGF、SP,Flt,CGRP,NCAM,PGP9.5などの創傷治癒関連因子の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRで評価したが、HGFが知覚異常群で低値となる傾向にあったが、その他の因子でも有意差が得られていない。そのための追加実験と解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、知覚神経異常の存在下では皮膚創傷の治癒が遅延しているのではないかという仮説を検証している。創傷治癒の評価はこれまでに私たちが報告した皮膚全層欠損創に対する創傷治癒評価法を用いている。治癒過程は、標本から創収縮率、ならびに上皮化率を定量化することで、創傷が治癒に至る経過を経時的に評価できる。また組織学的には、さらに炎症細胞浸潤の定量をおこなうことで評価する。さらに創傷の局所での痛みに関与する神経ペプチド、特に創傷治癒にも関連することが報告されている成長因子、神経因子の動態について解析する。これまでの研究で知覚異常が皮膚の創傷治癒に影響することは確認されてきたが、今後はそのメカニズムについての解析をさらに進めたい。
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Causes of Carryover |
診療および医学部と学会の各種委員会活動により、昨年度は研究者が多忙になった。このため全般に研究計画の進捗に影響があった。また一部医学部研究室の災害により使用不能な時期があったため、研究計画が遅延し、当該次年度使用額が生じた。翌年度分の助成金と合わせて実験動物の購入、追加で検討する神経関連因子の抗体などの試薬の購入に充てる予定である。また、最終結果の論文による公表のための費用も含んでいる。
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