2015 Fiscal Year Research-status Report
同種アポトーシス細胞貪食によって誘導される口腔扁平上皮癌の細胞活性化機序
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15K11006
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 達也 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (70634856)
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
程 クン 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40207460)
朔 敬 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40145264)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 病理学 / アポトーシス / 貪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の実験を行った。 1. pHrodoを用いた同種アポトーシス細胞貪食の観察と定量化:実験には口腔扁平上皮癌由来培養細胞Ca9-22・SASを用いた。UV照射によりアポトーシスを誘導した細胞を、酸性環境下特異的に明るい蛍光を発する蛍光色素pHrodoで標識し、生活がん細胞とともに共培養した。その結果、生活がん細胞の細胞質内に取り込まれた死細胞に一致して、強い蛍光が認められ、死細胞はファゴゾーム内の酸性状況にあることが示された。また、洗浄後に回収した細胞をフローサイトメーターで解析したところ、Ca9-22では90%以上、SASでは50%程度のがん細胞が死細胞を貪食していることがわかった。 2. 超微細構造観察:アポトーシス細胞と共培養した生活がん細胞を、透過電子顕微鏡にて観察すると、死細胞は生活がん細胞のファゴゾーム内に取り込まれており、その周囲からライソゾームの融合が認められた。 3. 同種死細胞貪食現象に関わる分子機構:マクロファージなどの貪食専門細胞では、アポトーシス細胞処理に低分子GTPアーゼRac-1が重要な役割を果たしている。がん細胞もマクロファージ同様の機序を利用している可能性があったので、貪食実験系にRac-1阻害剤を添加し貪食細胞率を解析したところ、死細胞貪食が有意に抑制された。したがって、貪食専門細胞と共通の分子機構が存在することが示唆された。 4. 同種死細胞貪食によるがん細胞の変化:アポトーシス細胞を貪食した後のがん細胞の機能変化を調べるために、遊走浸潤試験を行った。単独培養のがん細胞、アポトーシス細胞あるいはネクローシス細胞と共培養したがん細胞を比較すると、アポトーシス細胞と共培養したがん細胞でのみ遊走浸潤能が亢進し、この機能亢進はRac-1阻害剤添加によって解除された。以上より、同種アポトーシス細胞貪食ががん細胞機能を活性化する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおり、着実に結果が得られている。本年度の成果として、アポトーシス細胞貪食ががん細胞機能を亢進することを示すことができた。すなわち、仮説の根幹部分の証明がなされ、研究計画が妥当であったと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがって次年度より、アポトーシス細胞貪食後に貪食がん細胞で生じる分子発現プロファイルの変化をDNAマイクロアレイ法などで網羅的に解析し、そこから得られた個々の結果について検証を進めていく予定である。細胞増殖や遊走浸潤に関連するシグナル伝達経路に加え、アポトーシス貪食による脂質負荷増大が予想されるので、脂質代謝関連分子の発現変化に注目していく。
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Causes of Carryover |
研究計画にしたがって物品費および旅費を支出してきたが、最終的に必要試薬の購入額に満たない残額が生じた。不必要な支出を避けるために、次年度使用額として計上した次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分の助成金と合算することにより、試薬・消耗品購入あるいは外注解析の費用として、有効に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)