2015 Fiscal Year Research-status Report
エンド・リソソーム性タンパク質分解の破綻による慢性炎症増悪メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K11079
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
門脇 知子 (筑波知子) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (70336080)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
筑波 隆幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (30264055)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 生体応答 / エンドソーム / リソソーム / タンパク質分解 / 細胞内輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症は、さまざまな生体侵襲物に対する生体防御反応であり、微生物感染、異物侵入、紫外線・放射線照射など外的刺激物質(PAMP: pathogen-associated molecular pattern)だけでなく、生体内代謝産物の異常蓄積や壊死細胞由来の核酸や生理活性物質といった内的刺激物質(DAMP: damage-associated molecular pattern)によっても惹起されることがわかってきた。 エンド・リソソーム性プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の1つであるカテプシンE(CE)の欠損マウスにおけるマクロファージの解析から、エンド・リソソーム性タンパク質分解の異常が炎症応答に関する様々な物質の細胞内蓄積を起こすことが示された。TLR2やTLR4などのパターン認識受容体、CCR2などのケモカインレセプター、NADPHオキシターゼの主成分であるgp91phoxなどがこれに含まれている。また、CE欠損マウスでは還元型グルタチオンが有意に減少し、血清中の過酸化水素が増大するなど酸化ストレスを受けていることも明らかとなった。これに伴い、酸化ストレスにより誘導されるアネキシン1や酸化型ペルオキシレドキシン6の蓄積も見られた。さらにCE欠損マクロファージでは、オートファゴソームとリソソームの融合阻害が見られ、異常ミトコンドリアの細胞内蓄積も認められたことから、これが酸化ストレスの要因の一つであると考えられる。 このようにエンド・リソソーム性プロテアーゼの異常は、細胞内あるいは細胞表面の分子やオルガネラの質的・量的異常を引き起こし、生体応答の異常を惹起・持続させ、炎症反応を増大させることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度末に立ち上がった新しい研究室であるため、P2実験室の整備、機器の調達などインフラ整備に予定よりも時間がかかり、平成27年度に計画していた網羅的解析と動物実験が行えなかった。しかしながら、これらの問題はすでに解決されているので、平成28年度は円滑に研究遂行できると見込んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでは、予測される分子について解析を行ってきたので、網羅的解析についても進めていく。エンド・リソソーム性タンパク分解酵素を欠損させたマクロファージ系細胞で蓄積するタンパク質を2次元電気泳動/TOF-MSによって同定する。それらが内因性リガンドとして炎症応答を惹起するのか否かNF-kBの活性化を指標にして調べる。 また、細胞全体としての量に変化はないが、細胞での局在が変化する(例えば細胞表面への輸送が増減する)タンパク質についても細胞分画とフローサイトメトリ―によって同定し、これらのDAMPとしての作用を解析する。 これまでの研究から、カテプシンE酵素活性がWnt5aの細胞内輸送に関与することが示唆されているので、このメカニズムを調べるとともに、エンド・リソソーム性タンパク質分解とWntシグナルの関連性を明らかにし、癌との相関についても解明する。
|
Causes of Carryover |
研究代表者の研究室は平成26年11月に発足した新しい研究室であるため、当初予定では、必需品の冷凍冷蔵庫、小型超低温槽、恒温振とう器などの汎用機器の購入を計画していた。しかしながら、本研究で使用する消耗品が、フローサイトメトリー、リアルタイムPCRなど高額試薬を必要とするため、これら消耗品費を確保するため、設備備品については廃棄予定物品を譲り受けたり、他研究室から借用するなどで努力した結果である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度のフローサイトメトリー、リアルタイムPCRなどの試薬や実験用動物の購入、TOF-MS使用料に充てる。細胞培養のための血清も購入予定である。
|