2015 Fiscal Year Research-status Report
歯周靭帯幹細胞の多分化能力を応用した 靭帯・腱の再生治療法の確立
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15K11234
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大久保 直登 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 博士研究員 (00553207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 善政 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00224957)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 組織再生 / 歯根膜幹細胞 / 三次元培養 / 靭帯・腱 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の1年目となる今年度(平成27年度)におけるテーマは、1.『靭帯への分化に適した歯周靭帯幹細胞画分の抽出・濃縮方法の確立』であり、これは申請書の段階より『平成27~28年度』の2か年計画で行う予定としているものである。まず、最初の検討として、歯根膜組織採取直後からの様々な刺激を行うことで良質な幹細胞画分を採取できる可能性があるかの検討を行った。その結果、過去の論文の大部分で用いられている従来通りの歯根膜細胞採取方法(従来法)と比較してある刺激を加えて培養すること(改変法)で複数の幹細胞マーカーにおいてその遺伝子発現が優位に上昇し、細胞の形態もより立体的となり、さらに増殖能力も高くなることを確認した。検討段階で良好な結果が示されたために、更なる培養条件の検討を行うことした。 検討条件として、添加するサイトカインの種類の追加とともに、培養環境として、18%O2の通常培養条件に加え、5%O2の低酸素条件の追加を行い、合計24通りの条件での培養を試みた。その結果、コロニーフォーメーションアッセイにおいて従来法に比べて、条件によってはクリスタルバイオレットの平均吸光度において10倍を超えるコロニー形成能を有する培養条件が明らかとなった。 歯周靭帯幹細胞を用いたin vitroにおける3次元的な靭帯構造の解析についても、その組織学的な検討を行うためにパラフィン切片を作成し、詳細な観察を試みた。結果として、ヘマトキシリン・エオジン染色において、細胞の塊で形成された均一な棒状構造ではなく、外周を一層細胞でコートされ、内面は極性を有した長軸方向に平行に複数の微細な線上の構造が走るのが確認された。その線上構造は、膠原線維を染色するアザン染色によって強陽性を有する膠原繊維であることが判明した。この組織構造は、正常なヒトの靭帯の組織切片像と比較し、形態・性状ともに非常に酷似していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.『靭帯への分化に適した歯周靭帯幹細胞画分の抽出・濃縮方法の確立』において、前段階的な検討により、cell sorting(細胞分取)を行うことなく、組織採取直後からの培養条件を工夫することにより、より幹細胞性の高い画分を選択的に増殖させることが出来る可能性を示すことが出来た。この結果をもとに更なる条件検討を行ったところ、前段階試験よりもより歯根膜幹細胞選別に適した培養条件を見出すことに成功した。加えて、非常に数が少なく貴重である初代培養の細胞を非常に有効に利用でき且つ、幹細胞が増殖するのに有利でさらに一度に複数の培養条件を検討できる方法の確立と、その結果を簡易的かつ定量的に数値化できる評価方法の確立にも成功した。これらの方法の確立は、今後の2年間の研究の進展にとって非常に重要なものとなることは間違いない。 歯周靭帯幹細胞を用いたin vitroにおける3次元的な靭帯構造の解析についても、パラフィン切片をもちいた詳細な組織的構造解析により、三次元培養により作成した靭帯様構造は正常なヒトの靭帯組織像と比較して、形態・性状ともに非常に酷似していることが判明した。さらに、手動の引っ張り試験において当初予想していた以上の強靭な構造が形成されていることも判明している。 これらの成果により、初年度の成果としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の1年目となる今年度(平成27年度)におけるテーマは、1.『靭帯への分化に適した歯周靭帯幹細胞画分の抽出・濃縮方法の確立』であるが、培養条件の検討により従来法と比較してコロニー形成能が10倍以上高い細胞群を選別できることが判明した。さらに、非常に数が少なく貴重である初代培養の細胞を非常に有効に利用でき且つ、幹細胞が増殖するのに有利でさらに一度に複数の培養条件を検討できる方法の確立と、その結果を簡易的かつ定量的に数値化できる評価方法の確立にも成功している。今後は、この方法を利用することでより良質でかつ個人差を伴わず再現性良く幹細胞画分を選別できる培養条件の検討と、靭帯作成に適した幹細胞の選別法の検討を、転写因子『Screlaxis(Scx)』や『Tenomodulin(Tnmd)』などを指標に検討を行う予定である。 三次元培養における靭帯構造形成方法についても、より強靭でより大きい直径の靭帯を作成できるかを検討を行う予定としている。さらに、作成した靭帯の強度を現在は手動で引っ張ることでしか評価できていないが、工学系の機器などを利用することで定量的な引っ張り試験を行えるように調整中である。これにより定量的に靭帯の強度を評価することが出来れば、より靭帯作成に適した歯根膜幹細胞を作成する指標となるため、今後の研究の進展につながることが期待される。
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Causes of Carryover |
平成27年度中に全額使用済みであるが、年度末に購入した物品の支払が本報告書の作成時点で反映されていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり、平成27年度中に使用済みである。
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