2015 Fiscal Year Research-status Report
薬剤による歯周炎ならびにインプラント周囲炎の予防に関する実験病理学的研究
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15K11395
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
原 宜興 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (60159100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜飼 孝 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (20295091)
吉村 篤利 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (70253680)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インプラント周囲炎 / 歯周炎 / グリチルリチン酸 / ラット / 病理組織学的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周炎による歯の喪失に対してのインプラント治療は、歯周治療の1つのオプションとして考えられるようになっている。このインプラント治療の予後に非常に大きな影響を与える因子が、インプラント周囲炎である。この病変はインプラント周囲ポケットの出現とインプラント周囲骨の吸収(ossiointegrationの破壊)が特徴的だが、インプラント周囲炎の予防法については残念ながら不明確であり、早急に検討されるべき課題である。われわれはLPS感作ラットの上顎右側臼歯を抜歯後にインプラント体を植立し、上述の実験系にならって抗原を左側の天然歯とインプラント体周囲に滴下したところ、インプラント周囲ポケットの形成とインプラント体周囲の骨吸収が、天然歯よりも非常に早い時期に観察されることを報告した。そこで本研究では上述の実験系を用い、まず抗炎症剤として知られるグリチルリチン酸が、歯周病原性細菌による歯周組織破壊の予防に効果を発揮するかを追求し、次に緑茶カテキンとグリチルリチン酸が実験的歯周炎のみならず実験的インプラント周囲炎に効果を発揮するかを検討する。 われわれが確立したラット実験的歯周炎モデルでは、E. coli LPS感作ラットにLPSを歯肉溝塗布すると、10日目から軽度の歯周ポケット形成と歯槽骨吸収が起こる。そこで今回はまず、E. coli LPS感作ラットに発症する実験的歯周炎をグリチルリチン酸が抑制しうるかどうかを病理組織学的に検討した。その結果E. coli LPS感作ラットにLPSを作用させただけでは実験的歯周炎が発生する時期に、グリチルリチン酸うを作用させると実験的歯周炎は起こらなかった。今回の実験結果は、グリチルリチン酸がインプラント周囲炎を抑制しうる期待が高まる結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの腹腔内にPBSに溶解したE. coli LPSとcomplete Freund’s adjuvantを投与し、28日後にE. coli LPSを含有するincomplete Freund’s adjuvantを投与して免疫感作ラットを作製した。プロピレングリコールに0.01%、0.03%、0.3%で溶解したグリチルリチン酸(GA)溶液を作製した。LPS及びGAの組み合わせにより、control群、LPS群、0.01%群、0.03%群、0.3%群に分け、LPS 群では、上顎左側第一臼歯口蓋側歯肉溝にLPSを単独滴下投与した。一方GAの濃度に対応して0.01%群、0.03%群、0.3%群では、LPSと GAとを交互に滴下し、control群にはPBSのみを滴下した。 その結果、control群ではloss of attachmentを全く認めなかったが、LPS群では全てのラットにloss of attachmentを認めた。接合上皮内および周囲の結合組織中の炎症性細胞数を計測すると、接合上皮内炎症性細胞数はcontrol群と比較してLPS群で有意に増加していた。0.03%、0.3%群ではLPS群および0.01%群と比較して有意に減少した。結合組織中の炎症性細胞数は、control群と比較してLPS群で有意に増加しており、0.01%群、0.03%群、0.3%群ではLPS群と比較して有意に減少していた。 このことより、GAが炎症性細胞浸潤及びattachment lossを抑制することが示唆された。Control群の歯槽骨頂部は滑らかであり、破骨細胞は全く認めなかった。一方、LPS群では歯槽骨頂部の形態は不整であり、全てのblockに平均0.7±0.2個の破骨細胞を認めた。0.01%群、0.03%群、0.3%群では破骨細胞を全く認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず今回得られたGAの実験的歯周炎抑制効果についての論文を、国際歯に投稿する予定である。 次に、歯周病原性細菌であっても菌種によってLPSの活性がかなり異なるとされているので、抗原としてP. gingivalisおよびA. actinomycetemcomitansを用いて、GAの実験的歯周炎の抑制を検討する。 さらに、実験的インプラント周囲炎に対するグリチルリチン酸の抑制効果を検討するために、われわれが確立したインプラント周囲炎モデルを用いて、ラットにインプラントを植立し、周囲組織が安定した時期(植立後約30日)にインプラント周囲炎を発症させ、これに対してグリチルリチン酸が抑制効果を示すかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
物品費が、今年度の実験の進捗状況で次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、上記したごとく複数の実験系を予定しており、使用する計画も既に立案済みである。
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