2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K11533
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
梶谷 佳子 京都橘大学, 看護学部, 教授 (40224406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 純子 京都橘大学, 看護学部, 専任講師 (70636109)
小板橋 喜久代 京都橘大学, 看護学部, 教授 (80100600)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 看護師 / 臨床的想像力 / 臨床判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、看護師の臨床的想像力は、どのように発揮されているのかを明らかにすることである。以下の2段階で研究を行った。(1) 臨床的想像力の発揮の実態を明らかにしうるエキスパート看護師の経験に基づいた事例を作成する。(2)(1) で作成した事例を用いて、経験年数別に看護師の臨床的想像力の発揮の実態を明らかにする。本研究の意義としては、次の2点があげられる。1)看護師の臨床判断能力は、看護実践そのものを左右し、看護の質に直結する。この臨床判断能力を支える臨床的想像力について明らかにすることは、これまでに語られなかった看護師の思考という知見を可視化することができ、経験の異なる看護師間で共有し、創造的な看護活動を生み出すことに貢献すると考える。2)昨今の電子カルテおよびクリニカルパスの導入により、看護師の思考は、より合理的な方向に進んでいくと予測される。そのような中にあっても、個々の看護師の臨床的想像力を高めることで、複雑な患者の状況に即して共感性を伴った看護実践ができ、看護の質の担保をすることが可能になると考えられる。2016年10月にデータ収集を終了した。 現在、事例を用いたインタビューの21名分の音声データを文字データに起こし、逐語録を作成し、「想像したこと」「想像を助けたこと・経験」について、21名分のデータ分析を行っている。結果は、グループ①臨床経験1~3年、グループ②臨床経験4~7年、グループ③臨床経験8年目以上に分け、それぞれの特徴を明らかンしている。現在明らかになっていることは、グループ①~グループ③の比較の結果、グループ①の想像したことは、グループ②、③よりも数的には多かった。経験年数が長いほど、事例の状況を限定的に考え、正確な臨床判断を導くための想像となっていた。経験の浅いグループの特徴は、少ない経験を総動員させ、現象の性質を同列に意味づけていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗が遅れている理由は、多々あるが、1つ目は、職場の様々な役割の遂行を優先させているためである。自分自身の教育活動において、研究で得られた知見を駆使できるような教授活動のためにも考察、まとめを進める必要がある。 2つ目の理由は、当初の予定であった研究者の選定が計画に反して困難であったことである。データ収集期間が1年から2年に延長したことがあげられる。 3つ目は、私的なことではあるが、2017年度末から2018年度にかけて、両親の介護を要する必要が生じた。母は要介護5、父は要支援1であり、介護保険制度を活用し、自宅での介護の環境を整えている。職業柄、自分自身のもつ知識や技術を両親に役立てたいと思っていること、親の強い希望により、在宅介護の状態である。介護が始まって5か月であるが、様々な医療・福祉職の助力を得ながら、生活を整えることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、看護師の臨床的想像力は、どのように発揮されているのかを明らかにすることである。次の2段階で進めてきた。(1) 臨床的想像力の発揮の実態を明らかにしうるエキスパート看護師の経験に基づいた事例を作成する。(2)(1) で作成した事例を用いて、経験年数別に看護師の臨床的想像力の発揮の実態を明らかにする。 データ収集は完了しており、現在、データ分析を進めている。今後は、分析データから読み取れる内容を考察し、知見を見出す予定である。 当面の予定としては、2018年6月中にグループ①~③の想像したことの「想像をしたこと」「想像を助けたこと・経験」について丁寧な分析を行う予定である。本研究は質的データを扱うため、データの信ぴょう性や妥当性を確保する必要がある。看護キャリア開発学のエキスパート数人によるスーパーバイズを受けながら進める予定である。 患者の状況の中にいること、患者の生理的・人間的ニーズに直面していること、競合している事柄を認識すること、危険や不確実さを感じること、展開している状況の流れに内在している制限や可能性を信じることなどを思い描く能力を指す。臨床的想像力によって看護師は、結論の出ない確定していない臨床状況の中で適切な行動と方策をとることができる(Benner,1999/2005)。 グループ③では、「想像したこと」および「想像を助けたこと・経験」の内容数がグループ①および②と比較すると少なかった。そして、カテゴリー上では、グループ①~③のグループで似通っていることが分かった。 今後は、サブカテゴリレベルの比較を行うこと。グループ間の差異だけでなく、共通することも明らかにする予定である。 7月中には、上記内容を到達させる予定である。
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Causes of Carryover |
予算の用途の多くは、成果を発表するための学会参加費であった。研究に必要な図書や文献については、予算を執行しているが、本研究の成果が出せていないことにより、学会での発表の準備ができず、目標とする学会参加ができなかったことが次年度使用額が生じた最大の理由である。また、知見を広げ、深めるための学会参加について、海外を想定していたが、本務校の規定で、実習予定の2週間前までには帰国しておく必要があることから、参加意思のある海外開催の学会に参加できなかったことも理由である。1年目~2年目のデータ収集、テープ起こしに係る経費は今後は不要である。 今後の予算執行の計画としては、現在、データ分析中であるが、そのスパーバイズを受けるための出張旅費が必要であること、成果をまとめた報告書を作成すること、成果を国内外の学会で発表する必要がある。これらの予定から、学会参加のための出張費、学会参加費などは必要である。また、分析を進めるための図書や文献の必要である。加えて、成果報告書作成については、大幅な予算を執行する予定である。
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