Outline of Annual Research Achievements |
老健施設の看護管理者5名および老人看護専門看護師3名を対象としたインタビュー調査により,老健における看護師の専門職性として,自律,包括的ケア,利用者擁護,教育者,多職種協同の6つの特性が抽出された. 次にこの結果を踏まえ,3次元組織コミットメント(情緒的コミットメント;AC,規範的コミットメント;NC,存続的コミットメント;CC),職務満足度, 専門職者行動に関する質問紙調査を実施した.対象者は看護職 1,189 名. そのうち91%(n=1,084)が女性, 75%(n=890)が既婚であった.平均年齢は48.2歳, 経験年数では65%(n=776)が20年以上,教育背景は准看護師専門学校が最多(n=651;55%)で,多くはスタッフ(n=791; 66%)であった. 職務満足度は,平均値をカットオフ値とし,高低群に分け高い群は52%(n=622),低い群は48%(n=567)であった.3つの組織コミットメントの合計の平均スコアは60(SD;52-67)であった. 対象者の特性,職務満足度,専門職者行動および組織のコミットメントにより共分散構造分析によって専門職性を向上させる組織コミットメントモデルを構築した.職務満足度からACへの因果関係は0.52で,ACからNCへの因果関係は0.53,NCからCCへの因果関係は0.22,CCからACへの因果関係は0.32であった.つまり,各要素が互いに影響を及ぼし合っていることが明らかになった.さらに,ACとNCは高い相関関係が認められ,専門職行動にポジティブな影響を及ぼし,CCは専門職行動にネガティブな影響があることが明らかになった.ACとNCは高いパフォーマンスや組織内での良き市民としての行動に関係するが,CCはそれらとは負の関係にある.したがって,専門職性の向上のためにはACとNCを高めることが必要であると結論づけられた.
|