2017 Fiscal Year Research-status Report
隔離政策がもたらしたハンセン病回復者の尊厳を回復する社会支援システムの再構築
Project/Area Number |
15K11814
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
河口 朝子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (60555473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯野 真穂 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 講師 (50549376)
石川 美智 活水女子大学, 看護学部, 准教授 (40638706)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハンセン病 / 差別 / 偏見 / スティグマ / 社会支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハンセン病者として偏見差別を受けた社会の中で生活する上で、ハンセン病回復者にとって必要な社会支援システムを考える。 本研究目的は、ハンセン病回復者の社会支援体制がどのようになっているのか、資料分析とハンセン病回復者及び支援団体からの聞き取りにより、その実態と課題を明らかにすることである。研究方法は、資料および全国47自治体の公式HPの事業内容を分析した。また、支援団体3か所5名に(東京・大阪・沖縄)活動の実際と社会支援体制の課題の聞き取りおよびフィールドワークを行い、内容分析を行った。 その結果、社会支援体制は、各自治体で行政の取り組みの担当部署を設置していた。ただし兼務での人員配置で運営していた。主な事業内容は、パンフレット配布などの啓発事業、里帰り事業、訪問・相談事業・交流事業、社会復帰支援であった。啓発活動以外の事業は、各自治体により格差がみられた。支援団体の設置は全国2か所と絶対数が不足している。その他は任意の団体で運営していた。支援団体の取り組みでは、生活困難な状況の相談とタイムリーな解決支援が語られ、ハンセン病回復者の身近な相談者としての役割とその成果を見出せた。ハンセン病回復者の中には、知覚神経麻痺の後遺症を抱えており、後遺症の治療・ケアや老化に伴う介護・福祉・医療・看護サービスのニーズを要する。しかし、医療機関の受診はハンセン病の過去を告知することにつながる。過去に受けた差別偏見が恐怖・不安として想起され受診のためらいから病状悪化し下肢切断に至ったケースが語られた。ハンセン病回復者は、ハンセン病の病歴を語れないことによる医療機関への受診回避に伴う病状悪化、訪問看護・介護サービス利用回避、介護支援サービスや施設への入居困難がみられ、高齢者が利用する社会支援システムの活用が困難な状況が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハンセン病回復者に対する社会支援体制について、既存の高齢者支援の社会支援システムでは活用困難であることが明らかにできた。ハンセン病者への偏見差別が強かった地区での啓発活動のため公開シンポジウムを予定したが、ハンセン病者が受けた隔離政策、偏見差別の歴史の理解も不十分な状況であった。そこで小中学校への啓発教育依頼を行った(教育機関を通して2度)。しかし同意は得られなかった。そこで、国立療養所内2ヶ所で、職員へのハンセン病者が受けた偏見差別のセルフ・スティグマについての教育講義と学会での教育講演に方法に変更し、身近な支援者が必要とするハンセン病回復者への社会支援体制を分析した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の総括を行う。27年度、28年度及び29年度の研究結果からハンセン病回復者の内面化された差別への軽減を図る対策を検討する。ハンセン病回復者である後期高齢者が地域で活用できる介護サービスや医療サービスをためらうことなく受けられるための社会支援システムを再構築する。 (ハンセン病者であったことを気づかれるのではないかという恐れから受診行動をとらないことによる病気の悪化や社会からの孤立化が改善されるような)
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Causes of Carryover |
(理由)石垣島での公開シンポジウムを計画したが関連機関等の同意が得られず、市民向けの公開講座を専門職団体へ変更したこともあり、共同研究者全員のかかわりの必要がなく共同研究者の旅費の使用少なくなった。 (使用計画)補足データ収集と社会支援システム構築に関する提案の妥当性についての確認のため、関連機関との打ち合わせを要するための旅費、研究総括にあたりデータ整理のための人件費が必要になる。
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