2017 Fiscal Year Research-status Report
地域で暮らす精神障害者の被災体験をふまえたレジリエントコミュニティ形成支援法開発
Project/Area Number |
15K11844
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
野崎 章子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 講師 (90361419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 公一郎 自治医科大学, 看護学部, 教授 (00291625)
山下 純 福山大学, 薬学部, 准教授 (40726543) [Withdrawn]
山浦 克典 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (10543069)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 精神障害者 / 災害体験 / 災害メンタルヘルス / レジリエンス / 減災行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目標は、地域に暮らす精神障害を持つ人々も、災害発生時に対処でき、被害を最少に食い止め、さらに速やかに回復する、すなわちレジリエントなコミュニティを形成することである。平成29年度は、本研究課題計画においては最終段階であり、本研究のターゲットである地域に暮らす精神障害を持つ人々と関係者を対象に、防災の観点を包含した当事者主体型のプログラムを実施し、その前後に防災に関する主観的認識・知識・行動、レジリエンスに関連する項目等の変化により効果を測定・評価する予定として準備を行った。この一環として、それまでの段階での研究成果を踏まえ、介入予定のフィールドである首都圏に位置する、対象者が集う複数の地域の就労支援施設や地域活動支援センター等の責任者および利用者約20名、そしてその家族4名、同施設ボランティア3名より、介入プログラムの内容や方法に関して数回のヒアリングを実施した。その結果、疾患の種類や年齢によっては、同居・別居の家族員(主に親)が本人にできるだけ不安・負担無く暮らしてもらいたいという配慮により、家族員が本人になりかわり減災行動を行っていることや、障害を持つ当事者は敢えて災害の事を考えないという対処を行っていることがさらに明らかとなった。こうした状況や東日本大震災発生時には、福祉施設からの帰宅困難事例もあり、介入プログラム実施以前に、障害を持つ当事者に加え、その家族員そして地域の就労支援施設等の福祉施設等をも対象に加え、被災体験および現在の防災対策・ニーズ等について追加にて質問紙調査を行うこととした。平成29年12月より質問紙を作成中であり、研究協力者らと検討中である。また、前段階の、地域に暮らす精神障害者の東日本大震災の体験および防災対策に関する聞き取り調査結果については、平成29年10月にドイツのベルリンにて開催された世界精神医学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたとおり、最終段階である介入プログラム実施の準備として当事者および関係者に対しヒアリングを複数名・複数回実施した結果、本研究課題のターゲットである精神障害を持ちながら地域に暮らす人々の防災・減災行動は、その疾患や家族員(特に親)の心配・配慮・防災行動に依拠していることが明らかとなった。また、当事者の個人のレジリエンスとして敢えて災害のことを考えない、将来のことは考えないという対処を取っているものが少なくなく、これは本研究課題の焦点である、「レジリエントなコミュニティ形成」、つまり、障害者も障害を持たない地域住民もともに積極的に防災・減災に取り組むという方向性とは相反するものである。精神障害という疾患の特性に起因する脆弱性に配慮し、かつ当事者のあえて考えないという対処行動を考慮する必要がある。つまり、当事者が希望しない防災・減災のための介入は侵入的となる可能性が否めない。さらに、帰宅困難事例は通所施設からの帰りに発生しており、施設関係者係をも含めた、防災・減災のための介入プログラムが必要である。 こうした状況より、本来、介入と同時に行う予定であった当事者を対象とする大規模調査に加え、家族や地域の就労支援等の福祉施設関係者に対しても追加にて調査を行うこととした。その結果、実施年限を1年間延長し、平成30年度を終了年限とした。
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Strategy for Future Research Activity |
大規模調査についてはすでに平成29年12月より質問紙作成を開始しており、ドラフト版を研究協力者間にて修正中である。倫理審査承認後、夏季にはデータ収集に着手予定である。また介入については、すでに研究参加フィールドを確保しているため、大規模調査の結果を考慮しつつ、平成30年度内に実施・評価を行う予定である。また、前段階の調査結果についてはさらに、国外では環太平洋精神医学会、国内では日本社会精神医学会等の学会において発表し、かつ論文投稿等の成果発表を行う予定としている。
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Causes of Carryover |
平成29年度に実施する予定であった大規模調査を、対象を拡大して平成30年度に行うこととしたためである。平成30年度の大規模調査において通信費およびその後の成果発表のために使用する予定である。
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