2015 Fiscal Year Research-status Report
重力変化に対する耳石・前庭系の適応:過重力で微小重力が模擬できるか?
Project/Area Number |
15K11916
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
森田 啓之 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80145044)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 過重力環境 / 微小重力環境 / 前庭系 / エピゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
・過重力実験:国際宇宙ステーション搭載予定の短腕遠心機(15 cm)の生物適合性を調べるため,短腕遠心機(77 rpm:宇宙の微小重力環境下では1 g,地上の1 g環境下では1.4 g相当)内でマウスを2-4週間飼育し,体重,摂食・飲水量,活動量,中枢でのFos発現,前庭系を介する運動等を測定し,長腕遠心機(150 cm)飼育マウスと比較した。その結果,短腕遠心機飼育マウスと長腕遠心機飼育マウスに差はなく,短腕遠心機がマウス飼育に使用できることが確かめられた。また,過重力環境飼育で起こる体重減少,摂食・飲水量減少,活動量減少が前庭破壊マウスでは見られなくなることから,これらの変化は前庭系を介して引き起こされることが分かった (PLOS ONE, 10(7): e0133981, 2015)。 ・国際宇宙ステーションで飼育したマウスを回収する時に発生する5-10 g 2分間の影響を調べるため,10 g 2分間の暴露後の行動,摂食量,体重変化,中枢でのFos発現を調べた。前庭神経核,孤束核,室傍核,視索上核に有意なFos発現を認めた。孤束核以外のFos発現は,前庭破壊マウスで有意に抑制された。血中コルチコステロン濃度は負荷30分後に有意に増加したが,90分後には前値にまで回復した。また,負荷後1日間の摂食量は軽度減少したが,体重の有意な変化は認められなかった。以上の結果から,回収時の重力負荷は一時的なストレスとなるが,その影響は短時間であることが分かった。 ・骨迷路標本から感覚上皮細胞をレーザーマイクロダイセクションで切り出し,RNAseq, ChIPseqを実施する方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度の研究実施計画にあげた項目は実施できた。特にレーザーマイクロダイセクション法により切り出した感覚上皮細胞,前庭神経節等をエピゲノム解析する方法が確立できたことにより,異なる重力環境により引き起こされる前庭系の可塑性を受容器レベルで解析することができるようになったことは,今後の研究を進めるうえで重要なツールになる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年7-8月に宇宙マウス実験が行われ,4週間宇宙の微小重力環境下で飼育されたマウスおよび同じ期間宇宙の1 g環境下(国際宇宙ステーションの短腕遠心機内)で飼育されたマウスの骨迷路と前庭神経核のサンプルを採取して解析を進める予定である。感覚上皮細胞⇒前庭神経節⇒前庭神経核の神経経路に沿って,27年度に確立したレーザーマイクロダイセクション法によるエピゲノム・遺伝子解析,受容体タンパク解析を実施することにより,微少重力環境に曝された時に起こる前庭系の可塑的変化の機序を解明する。さらに地上の2 g環境下で飼育したマウスに関しても同様の解析を行い,微小重力により引き起こされる変化と過重力により引き起こされた変化との相似性,相違性を明らかにする。
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