2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study of complex factors and reforms in failure of nuclear disaster prevention
Project/Area Number |
15K11934
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
川野 祐二 下関市立大学, 経済学部, 教授 (30411747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 斉 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (30174890)
綾部 広則 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80313211)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子力防災 / 脱原発運動 / 業界団体 / 市民運動 / 科学批判 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は2018年1月14日に逝去した科学史家で、原子力政策と脱原発政策に影響を有した吉岡斉の資料と知見を散逸させないよう、資料の保存・分類・整理をすすめた。本研究課題を遂行し、日本の科学技術史における吉岡の立ち位置を把握するために、ご遺族の了承のもと、彼の研究室と自宅の資料の移設を完了し、複数箇所に保管した。また、彼の活動実績と思想を記録するために、5月には日本科学史学会で「吉岡斉追悼セッション」を開催、9月末には「吉岡斉を偲ぶ会」を東京で開催して吉岡に関する情報を参加者から聴取、12月の「科学技術論学会」でも「吉岡斉追悼シンポジウム」を開催して、彼の思想と活動を多角的に把握し、我が国における原子力防災や科学推進体制に絡む彼の立ち位置を明らかにしようと試みた。 科学技術の推進体制に批判的立場をとりながら、反対を唱えるだけでなく、代替政策を提案する吉岡のスタイルは、当初、反原発運動のなかでも特異なものとされたようだが、「科学技術と社会が引き起こす各種の問題」を「構造的に把握」し、「現実的な代替政策を導き出す」という彼の政策立案思考は、次第に反原発運動の中でも理解を得るようになった。こうして「反原発から脱原発へ」という現実路線を主唱する人物の一人として、吉岡を評価することが可能である。 この吉岡の思想形成過程については、今後の研究課題でもあるが、科学批判の流れからは、広重徹、中山茂、高木仁三郎の影響が大きかった。また国の審議会等で現実の原子力政策に関わる機会を得たことが、彼をして「一研究者」に止まらず、「政策提案者」へと飛躍させるきっかけとなった。福島原発事故を経て、その思いはより強固なものになった。 我が国の原子力防災の失敗要因の一つは、そのリスクの大きさにも関わらず「科学批判を含めた政策形成をしてこなかった」という「政策の視野狭窄」であると小括する。
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Research Products
(6 results)