2015 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災からの復興における障害者に関する福祉コミュニティの構築とその意義
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15K11936
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
古山 周太郎 東北工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80530576)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 障害者福祉 / 震災復興 / 被災地支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、沿岸被災自治体における被災後の障害福祉サービス等の復興実態把握として、岩手県内の津波被災自治体のうち4市の障害者福祉担当部局への聞き取り調査を実施した。町及び村は、元々障害者福祉を専門とする部局がなく、また圏域単位で動きが基本である点を踏まえ、調査対象外とした。聞き取り調査の結果、全ての自治体で、震災後、障害者福祉サービス量や事業所は減少するよりもむしろ増加に転じていることが明らかになった。また、震災後の新たな取り組みとして、事業者の連携に基づく防災対策や、被災地外の自立支援協議会との連携、障害福祉計画策定および評価への当事者の参加などが挙げられた。 次いで、被災自治体による障害者福祉サービスの震災前後の変化をみるために、岩手県障害福祉担当部局より提供された2010年から2015年の障害者福祉サービスのデータを分析した。日中活動系サービスの事業所は、2010年は62か所あり、震災後の2011年には65か所、その後年2~3か所ずつ増加し、2015年時点では75か所となっている。また、2010年と2015年の間で増加した割合が高いのは、就労継続支援A型、生活介護、就労継続支援B型の3種であり、特定のサービスについては震災以前よりも大幅に増加したという実態が明らかとなった。 さらに、上記データをもとに、被災した事業所と新規開設した事業所のうち調査協力を得られた6か所に対して、事業所の運営者に対してインタビュー調査を実施した。調査項目は、被災から事業再開・開始までの経緯、事業再開・開始から現在までの状況、事業所の活動への被災や復興の影響等である。結果について現在分析中であるが、被災事業所は、インフォーマルな支援等により、早い段階で復旧に至った点や、被災地外から拠点を形成して支援活動をしていた組織が、継続的にサービス提供を実施していることが明らかとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では東北被災3件の自治体すべての聞き取り調査を予定していたが、岩手県内の自治体のみの実施となった。その理由は、県の障害者福祉部局からの事業所データーの提供があり、計画外の集計と分析業務が発生したためである。それによって、岩手県の震災前後の障害者福祉サービスの全体的な状況把握が可能となり、今後の調査活動に大きく寄与した。なお、他2県の自治体ヒアリングについては、次年度以降に実施する予定である。また、事業者へのインタビューについては順調に推移しており、計画どおりに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは前年度と同様の調査を、宮城県内の自治体や事業者を対象に実施していく。宮城県内は対象とする事業所や自治体が多いため、ヒアリング調査と共にアンケート調査の実施も予定している。 さらに、前年度で調査対象とした市から、被災後に障害者福祉について新たなサービス及び地域資源の開発や、当事者や関係者のネットワーク構築に取り組む自治体を選び、より詳細な調査を実施する。対象としては、釜石市の自立支援協議会と協定を締結した横浜市西区の自立支援協議会や、震災後から被災地障害者支援センターの運営に関わった、愛知県名古屋市のAJU自立の家などを想定している。調査では、関係者へのヒアリングや、行政及び団体の活動資料をもとに、各主体の果たした役割や関係図を作成し、協働ネットワークの実態を整理し、各主体の関わり方や、ネットワーク形成の経緯と期待する役割、及び今後の障害者福祉に関する地域課題についても聞き取りを行なう。 続いて、被災した障害当事者やグループホーム等のスタッフを対象に、ヒアリング調査を実施する。被災後の障害者の実態調査は、複数の地方自治体で実施されており、調査項目の設定については先行調査を参考とする。調査項目としては、まず被災以前のサービスの利用実態と暮らしの状況を把握する。さらに被災時から現在までサービス利用実態(内容、頻度、提供状況)を時系列で整理し、震災による暮らしや生活の変化について聞き取りを行う。特に、意識変化をもたらした契機についても調査していく。さらに、新たな取組への評価や、復興後の障害者福祉に期待する役割についても調査する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、ヒアリング調査が中心となりデーター入力作業が生じなかったために、当初見込んでいた人件費の支出がなく、余剰金額が発生した。また、研究協力者への謝金や研究会の開催についても、データーの整理作業中のために、協力者からの意見をいただく段階ではなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度はアンケート調査や、ヒアリング調査の実施を予定しており、データ入力や分析作業について人件費や旅費等が発生すると考えられる。また学会発表も実施予定であり、そのための旅費や経費が発生する。
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