2016 Fiscal Year Research-status Report
塩生植物アッケシソウのバイオ燃料生産能と環境修復能の実証試験による評価
Project/Area Number |
15K11953
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山口 武視 鳥取大学, 農学部, 教授 (30182447)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 真理子 鳥取大学, 農学部, 准教授 (20324999)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | アッケシソウ / 栽培 / 油脂含量 |
Outline of Annual Research Achievements |
アッケシソウを栽培する土壌を砂丘砂(砂)、水田土壌(土)および砂丘砂50%+水田土50%(半)の3種とし、播種密度を16.8 g/m2(疎)、33.6 g/m2(中)および50.4 g/m2(密)の3段階として、それぞれを組み合わせた計9処理(3反復)を設けた。土区の発芽率は著しく悪く、調査対象からは除外した。m2当たり発芽個体数は疎区で4,280個体、中区で8,560個体、密区で15,540個体であった。播種後約1ヶ月は生育が停滞したが、個体当たり乾物重は、半疎区が最も大で、最も生育が劣ったのは砂密区であった。しかし、m2当たり乾物重では、密区の方が疎区よりも大となり、砂区よりも半区の方がよい生育となった。草丈と個体当たり乾物重には高い相関関係が認められた。種子収量は砂中区が16.8 g/m2で最も高く、次いで砂密区が15.8 g/m2であり、最も低収は密半区の4.4 g/m2であった。 岡山県瀬戸内市尻海の塩田跡地に自生するアッケシソウを瀬戸内市の許可を得て、サンプリング調査を行った。自生地は砂質土壌の湛水状態の場所で繁茂していた。個体密度は最大で4,864個体/m2であり、m2当たり個体数と個体乾物重とは、3,9000個体をピークとする単頂曲線で示された。個体当たり乾物重は、自生地の方が栽培実験よりも2倍以上大きいが、m2当たり乾物重は、栽培実験で最大値を示した密半区とほぼ同じ値(1.1kg/m2)であった。 種子の油脂含量を調べたところ、乾燥重量当たり約14%の油脂が含まれていることが明らかとなった。植物体の地上部においては、NaClの有無による乾燥重量当たりの油脂含量の差は認められず、いずれも3~4%の油脂が含まれていた。しかしながら、NaCl処理区においは無処理区と比較して成長が促進されるので、1個体あたりの油脂含量はNaCl処理区で多くなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アッケシソウの栽培は比較的容易と判断して、土壌環境および栽植密度を変えて、最適栽培環境を探る調査を実施した。しかしながら、最も生育がよくなるであろうと予測した富栄養土壌である水田土壌では、著しく発芽率が低下した。これは、播種前に海水で湛水した際、代かきのように十分土壌と海水を混和させたことが原因と推察した。一方、砂丘砂を用いた実験では、良好な発芽率を示した。これより、アッケシソウの発芽には酸素が供給されることが必要であり、一般栽培でそれを求めるとやはり自生地がそうであるように砂土壌が適しているものと推察した。播種密度も密になるほど1個体の大きさは小さくなるため、播種量は15 g/m2程度が適当と判断した。 これらの結果から、当初予定していた水田土壌ではなく、砂丘砂を利用した栽培条件に変更して、播種期と最適施肥量を求める実験に計画を変更することにした。 アッケシソウの各器官の油脂含量をソックスレー抽出法でヘキサンを用いて油脂を抽出して求めた。乾燥重量あたり、種子においては約14%、NaCl無処理区の地上部においては3.3%、NaCl 200 mM処理区の地上部においては3.6%の油脂が含まれていた。GC-MSを用いてNaCl 200 mM処理区において脂肪酸組成を調べたところ、地上部においては、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸がそれぞれ30%程度含まれていた。地下部においては、地下部においてはパルミチン酸とステアリン酸がそれぞれ50%程度含まれていた。種子においてはリノール酸が68%含まれていた。これらの結果から、器官により脂肪酸の組成が異なり、種子においては不飽和度の高い脂肪酸が蓄積することが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験ではアッケシソウの十分な生育量を確保することが難しかったが、栽培化に向けて、安定した定着を確保するために砂質土壌を用いて、播種期と施肥条件について検討することが必要と判断している。具体的には、厚さ5cmの高床式砂ベットを用いて、十分酸素が行き渡る条件を作出した上で、播種期と施肥量を変えて、生育量の確保が可能かどうかを検証する。 一方、油脂含量については、アッケシソウをNaCl濃度の異なる培地で生育させ、最も油脂含量の多くなる条件を調べ、単位面積当たりの油脂生成量が最も多くなる条件を設定する。また、器官により脂肪酸の組成が異なることから、脂肪酸生成に関わる経路の調節機構を遺伝子発現等を調べることにより、明らかにする。
|