2016 Fiscal Year Annual Research Report
Physiolophysiology of "beginner's luck"
Project/Area Number |
15K12049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻本 悟史 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (20539241)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳波 / ビギナーズラック / GSR / 外国為替証拠金取引 / FX |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ビギナーズラックに関連した生理反応と脳活動を明らかにすることにある。一般に、課題の訓練を重ねたエキスパートでは、冷静かつ効率的な情報処理を行うことができる。このような状態に焦点を当てた研究は比較的進んでいるが、ビギナーはその比較対象として扱われ、あまり注目されてこなかった。しかし、ビギナーズラックに代表されるように、初心者は時に高いパフォーマンスを示すことがある。本研究では、その点に注目し、生理学的メカニズムの解明を目指した。 本研究では特に、外国為替証拠金取引(FX)場面に焦点をあて、バーチャルの取引場面を、ソフトウェア(Forex Tester 3)のスクリプトを用いて再現し、実験を実施した。実験参加者として、まったくFX取引の経験がない「ビギナー」と、少なくとも2年以上にわたって取引を続けている「経験者」の2グループを採用した。 取引回数と売買間隔の各指標から、ビギナーは経験者よりも頻繁に取引を行う傾向が確認された。一方、最終損益にはグループ間で有意差がなく、一部のビギナー参加者は、経験者の平均の5倍以上の最終利益を上げた。ある程度の確率でビギナーズラックが再現出来たと考えられる。 この状況下で、カスタムメイドの装置を用いて皮膚電気反応と心拍数を計測し、同時にEmotive社製の脳波計測装置によって、脳波計測を行った。単純なグループ間の比較では、各指標に有意差は見られなかった。一方で、ビギナーグループのほうが、皮膚電気反応と脳波(特に注意に関連する周波数成分)の分散が有意に大きく、2つのサブグループに分かれる傾向が見られた。現象としてビギナーズラックという形で現れる場合でも、生理学的にはいくつかの異なるメカニズムに起因している可能性が示唆された。タイプ分けして詳細を分析することで、ビギナーズラックの心理・生理的メカニズムの更なる解明が期待される。
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