2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12088
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桂 誠一郎 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00401779)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 温熱覚 / ペルチェエレクトロニクス / システムエネルギー変換 / 波動システム / 抽象化理工学 / Hand-to-Hand コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では遠隔地でのヒューマンインタラクションを向上する上で重要となる温熱覚の双方向呈示に焦点を絞り、電熱変換デバイスであるペルチェ素子のフレキシブル化ならびにその高精度な温熱分布制御の開発を目的とし、本年度において次のような研究実績を得ることができた。 1.ペルチェ素子のフレキシブル化に関する基礎検討 ペルチェ素子内部では、P型およびN型の2種の半導体が接合されており、電流を流すことでペルチェ効果に基づく熱流が発生する。市販されているペルチェ素子では機械的強度を保つためにセラミックプレートが用いられているため、フレキシブル性がほとんどなく、環境物体の形状に合わせて曲げることが困難である。そこで本研究では、柔軟性を持つポリイミドを採用し、素子のフレキシブル化に向けた回路構成について検討を行った。さらに,ビスマステルル半導体を蒸着することで、フレキシブルなペルチェ素子である「サーモフィルム」を試作した。 2.制御熱コンダクタンスの多次元化 制御熱コンダクタンスの多次元化に関して、ペルチェ素子のデバイスの変形がない場合に状況を限定した上で検討を行った。具体的には、空間分布のある温熱制御の理論構築について、熱拡散方程式の等価回路網を導出し、制御が可能なモデル化について検討を行った。温度分布あるいは熱流分布という制御熱コンダクタンスが無限大および零であるケースを最初に取り扱うことで、任意の値を持つ中間的な温熱分布制御系のシンセシスを可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で試作したフレキシブルなペルチェ素子である「サーモフィルム」について、CEATEC JAPANならびにシステム コントロール フェア、テクニカルショウヨコハマにて展示し、成果の一般公開を行った。システム コントロール フェアより奨励賞を受賞するに至り、客観的に本研究の持つ学術的な新規性が評価された。これはデバイスとシステムの総合デザインに基づいた「ペルチェエレクトロニクス」の方法論に関する斬新さが示されたもので、優位性は高い。この高いレベルでの総合デザイン方法論を新たなヒューマンインタフェース開発に応用することにより、構築されるシステムそのものも高性能化が見込まれ、当初の計画以上の成果が得られることが期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、デバイスの大面積フレキシブル化に取り組む。具体的には、ヒューマンインタフェースへの導入を意識し、人間の手の平をカバーする程度の大きさのデバイスを実現する。面積を増大させた場合においても機械的な強度を保つように、初年度の研究において得られた知見を踏まえた上でフレキシブルデバイスの設計、試作を行う。試作したフレキシブル熱デバイスの性能については、周波数応答による工学的な評価に加えて、官能試験を実施しヒューマンインタフェースへの適用性を評価することにより、本研究の意義を明らかにする。 以上のように、デバイスとシステムの総合デザインにより、空間的な温熱覚分布を呈示する「ペルチェエレクトロニクス」の学理を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(8 results)