2015 Fiscal Year Research-status Report
血球から捉える局所的放射線被ばくによる全身組織影響の分子メカニズム
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15K12201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅香 智美 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任研究員 (90555707)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | メダカ / 放射線 / 血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療等において、局所の急性症状が発生することはよく知られている。全身性の症状については存在が議論されているものの、それらが誘起される分子メカニズムについては詳しく研究されていない。我々は、メダカへの放射線の部分照射において、照射部位以外に生じる症状を見出しており、その原因として有核赤血球に着目した。本研究では、平成27、28年度の2年間で、放射線照射後のメダカの血球を分子レベルで解析し、全身性の応答を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目的とする。本研究は、メダカを用いた局所放射線照射系を利用して、血液に着目し、血球の示す放射線影響の評価を、細胞膜表面分子や転写から直接的に分析することで、高感度かつ特異的な応答を検出する。本研究により、被ばくによる体内影響への対処法の発展に寄与することが期待される。 平成27年度は、まず、血球・血液成分からの免疫応答物質の同定解析のためにメダカSK2成魚から2ulの血液を取得する方法を確立した。放射線照射後の初期応答と1週間程度との間で得られた血液を希釈後、塗抹標本を作製し、赤血球および白血球の病理学的解析および形態的数量的評価を行った。赤血球の核および細胞形態の変化が観察された。一方、放射線照射により好中球の増加傾向が観察されたが、有意な差を見出すには至らなかった。次に、全身応答を促す最低線量と最小照射面積の検討として、麻酔処理後のメダカSK2に対し、背あるいは腹側から1mmの領域に炭素イオンビームを15Gy照射1週間後まで採血を行い、血液の形態学的および数量的評価を行った。その結果、照射1日後には末梢の有核赤血球の減少が観察され、7日後にはメダカの造血組織である腎臓が照射された背側照射のみで顕著な血球数の減少が観察された。本研究は、独立行政法人日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所との共同利用により実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、計画に示されているように血液成分の取得方法を確立し、血球数の形態的・数量的評価を実施した。特に、高崎量子応用研究所の重粒子イオンビームを利用して限局された領域への照射を実施し、造血組織である腎臓への照射による二次的な変化と末梢血への直接的な変化を解析することを可能とした。赤血球については核および細胞の形態変化を観察することができた一方で、白血球の数が少なく数的有意差を持って評価することが困難であった。そこで、赤血球系列の放射線応答により絞って、赤芽球の放射線応答についても解析することとした。現在、フェニルヒドラジンによる溶血性貧血後に、メダカにおいても末梢に赤芽球が排出されることを確認している。また、平成27年度には、国際と国内学会併せて4回の成果発表を行った。従って、当初の予定におおよそ沿った形で順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に確立・実施した系を用いて、赤血球の放射線応答の解析を引き続き実施する。特に新生赤血球とそれ以外での放射線感受性に注目して実験を実施する。また、質量分析用のサンプルを調製し、マススペクトロスコピーにより解析する。血清中に存在する低分子化合物の測定にはGC-MSを用い、血球表面の高分子は、LC-MS/MSを用いて分析・同定する。得られた成果を国際学会で発表し、また学術雑誌への投稿を行うことで本研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、計画に示されているもののうち、ヘマトクリット遠心機および水圧式マニピュレータを購入する予定であったが、幸運にも、東京大学の2014年および2015年予算で双方の購入が可能となったので、この予算を平成28年度のGC-MS解析用試薬および消耗品の購入に充てられることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、当初予定されていた質量解析用の試薬および物品購入、メダカ飼育費用に加えて、GC-MS用の新しいキャピラリーカラムを購入する。また、成果を海外および国内学会で発表し、海外雑誌への論文の投稿を行う。以上の項目を実施するための費用が必要である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Histological and Transcriptomic Analysis of Adult Japanese Medaka Sampled Onboard the International Space Station.2015
Author(s)
Y. Murata, T. Yasuda, T. Watanabe-Asaka, S. Oda, A. Mantoku, K. Takeyama, M. Chatani, A. Kudo, S. Uchida, H. Suzuki, F. Tanigaki, M. Shirakawa, K. Fujisawa, Y. Hamamoto, S. Terai, H. Mitani.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 10
Pages: e0138799
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Availability of Medaka as Systemic Effect Model of Local Irradiation by Histological Analysis2015
Author(s)
Tomomi Watanabe-Asaka, Kazusa Ito, Chika Hashimoto, Takako Yasuda, Kento Nagata, Toshiyuki Nishimaki, Takafumi Katsumura, Hiroki Oota, Hiroko Ikeda, Yuichiro Yokota, Tetsuya Sakashita, Michiyo Suzuki, Tomoo Funayama, Yasuhiko Kobayashi, Shoji Oda, and Hiroshi Mitani
Organizer
15th International Congress of Radiation Research
Place of Presentation
京都国際会館(京都府京都市)
Year and Date
2015-05-24 – 2015-05-29
Int'l Joint Research
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