2016 Fiscal Year Research-status Report
モザイク変異を指標とした生殖細胞遺伝毒性試験の開発
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15K12205
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内村 有邦 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20513063)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 突然変異 / 遺伝毒性試験 / 哺乳類モデル / モザイク変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、哺乳類の生殖系列で発生する突然変異の生理学的機能や後世代影響、さらには、その発生メカニズムを明らかにするため、実験用マウスを用いて、突然変異蓄積系統の構築を進めてきた。本研究では、継代の世代数を増やすことが重要になる。現在もマウスの継代は続けられており、これまでの10年間の実験で、2016年に継代数が30世代を超えた。本年度は、この変異蓄積マウス系統を利用して、以下の解析を行った。 生殖系列における変異は生殖細胞の発生過程のどこかで生じることになるが、個体発生の最初期に変異が発生すると、全身でモザイク状態になると考えられる。本研究では、生殖細胞における変異発生とモザイク変異の関係を明らかにするため、私たちがこれまでに構築した「次世代シーケンサーを用いたモザイク変異の検出法」を利用して、変異蓄積マウス系統の解析に取り組んだ。その結果、当初、想定していた以上に高頻度でモザイク変異が発生することが明らかになった。さらに、その変異のスペクトラムは、通常の生殖系列変異のスペクトルとは大きく異なることが明らかになった。従来までの想定とは異なる結果であり、本研究を遂行する上で、確認実験の追加や、より精緻な条件での再解析を行うことが必要になった。また、本研究と並行して進めている、変異蓄積マウス系統の全ゲノムシーケンシングの追加解析の結果と組み合わせて、変異データを充実させることで、信頼度の高い生殖細胞遺伝毒性試験を構築し、その成果について論文で発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2016年度に実施した解析により、生殖系列で発生する変異の特徴と、モザイク状態で発生する変異についての特徴が明らかになった。当初、予想していたのと異なる結果が得られた。今回の結果は、新しい生殖細胞の遺伝毒性試験の開発を進める上で、なくてはならない結果であり、本研究の意義を大きく向上させる結果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
哺乳類生体内におけるモザイク状態の変異の存在様式が明らかになり、しかも想定した以上に本研究の重要性を示す結果がえられた。そのため、データを補強するための追加の確認実験と、より精緻な条件下での追加解析を実施することが必要になった。これらの実験を追加することで、より信頼度の高い遺伝毒性試験の新規方法論を構築し、その解析上の特徴も含めて、なるべく早く論文発表をしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
モザイク状態の変異の解析が順調に進み、想定外に重要な知見が得られた。これにより、より信頼度の高い遺伝毒性試験を開発するための追加実験が必要になった。そのため、本研究の成果を最終的にまとめていく段階で必要になる実験の一部が、年度内に実施できなくなり、次年度に使用する費用が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、今年度に実施できなかった実験を行うための費用として、適宜、使用していく予定である。
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Research Products
(3 results)