2015 Fiscal Year Research-status Report
生体外異物代謝におけるグルクロン酸抱合の進化と細胞内デリバリーに対する機能解明
Project/Area Number |
15K12213
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池中 良徳 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40543509)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水川 葉月 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (60612661)
中山 翔太 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (90647629)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 異物代謝第II相抱合反応 / グルクロン酸 / UGT / 細胞内デリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究では化学物質がグルクロン酸抱合後、細胞内で特定の輸送因子と結合し、デリバリーされると仮説を立てている。内因性・外因性を問わず、数千の化学物質がグルクロン酸抱合を受け細胞外に排泄されている事を考慮すると、その輸送因子の同定は重要である。当該研究では、分子間相互作用解析とプロテオーム解析により、その因子の同定を行う。また、当該研究では、比較生物学・系統解析で種間比較を行い、異物代謝における一般化を図る。 2015年度は、主に比較生物学・系統解析によりグルクロン酸抱合酵素(UGT)の種差を明らかにした。哺乳動物では、異物代謝第Ⅱ相反応におけるグルクロン酸抱合の寄与は大きい。しかし、異物代謝において何故グルクロン酸が用いられるようになったのか、未だ比較生物学的・進化学的解析は行われていない。そこで当該研究では、UGT活性が低いと報告されている食肉目を中心に新鮮肝を採取し、肝ミクロソーム画分を用いた代謝活性試験を行った。その結果、従来までUGT1A6活性が低いと報告されてきたネコ以外にも、キタオットセイやカスピカイアザラシなどの鰭脚類で極めてその活性が低いことが明らかになった。また、遺伝子構造解析であるシンテニー解析を行った結果、これらの動物では、UGT1A6に加え、UGT1A7や9等、異物代謝に関与するUGTに欠損が生じていることが明らかになった。更に、ステロイド代謝や種々の薬剤の代謝に関与するUGT2 familyでも同様に代謝活性を測定したところ、ネコでUGT2B活性が非常に低活性であるなど、大きな種差が観察された。 今年度得られたこれらの知見は、脊椎動物において、何故グルクロン酸が異物代謝系として選択・進化してきたのかを理解するうえで重要な知見となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、計画通りグルクロン酸抱合の起源と機能を進化学的・比較生物学的アプローチにより解明を試みた。困難が予想された種々の生物からの新鮮肝(動物の死後数時間以内に液体窒素により瞬間凍結した肝臓片)の入手が計画通り進行し、これまで不明であった食肉目のUGTの生体内での機能が推定できた。 一方、グルクロン酸抱合体の細胞内輸送システム(デリバリーシステム)の解明は、準備中であり、2016年度に実施する。
|
Strategy for Future Research Activity |
1、各抱合体の細胞分画別の蓄積性の解明と分子イメージングによる細胞内動態の観察 肝細胞(H4IIE又はHepG2)にPyreneを暴露し、遠心法で細胞分画後、LC/MSおよびLC/FDにより分析し、各抱合体の細胞内局剤を明らかにする。肝細胞に蛍光物質である多環芳香族を取り込ませた後、その代謝物の細胞内動態を蛍光顕微鏡又は共焦点顕微鏡でタイムラプス観察する。 2、新口動物におけるグルクロン酸抱合体の細胞内デリバリーシステムのスクリーニング 昆虫や甲殻類等の旧口動物はグルクロン酸抱合を生成せず、グルクロン酸抱合体は新口動物のみで進化してきた。今後、何故新口動物、とりわけ脊椎動物でグルクロン酸抱合体が用いられるようになったのか、UGTの機能的進化を明らかにすると共に、「グルクロン酸抱合体がシグナルとなる細胞内デリバリーシステム」を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
消耗品の単価が予定入荷額よりも安かったので、直接経費の次年度繰越が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に補填する。
|
Research Products
(20 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Identification of inter-specific differences in phase II reactions: Determination of metabolites in the urine of 16 mammalian species exposed to environmental pyrene.2015
Author(s)
Saengtienchai A, Ikenaka Y, Nakayama SMM, Mizukawa H, Kakehi M, Bortey-Sam N, Darwish W, Tsubota T, Terasaki M, Poapolathep A, Ishizuka M
-
Journal Title
Environmental Toxicology and Chemistry
Volume: 33
Pages: 2062-2069
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-