2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞内DNase I制御による画期的エピミュータジェンスクリーニング系の構築
Project/Area Number |
15K12214
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊吹 裕子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (30236781)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / DNase I / 界面活性剤 / 化学物質 / クロマチン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、一定以上の長さのアルキル側鎖を有する界面活性剤が、細胞骨格アクチンからDeoxyribonuclease I (DNase I)をリリースし、核内に移行させ、DNAを切断することを見出したことから、この現象をクロマチン構造変化のスクリーニングに応用することを思いついた。本年度は、評価手法構築の基盤となる技術の確定のため、界面活性剤の最適濃度、種類などを、DNase Iの細胞内分布とDNA切断の関係を含め検証した。 陰イオン界面活性剤であるLinear alkylbenzene sulfonate(LAS)の中でも、炭素数13以上のアルキル側鎖を有するLASの低濃度曝露が、細胞骨格アクチンからDNase Iをリリースし、核内に移行させ、DNAを切断した。また、非イオン界面活性剤であるNonylphenol polyethoxylate(アルキル側鎖炭素数10-20)、Tween 20、Triton X、Nonidet P-40の一定濃度で同様の効果が認められた。 ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤でヒストンを高アセチル化し、クロマチン構造を弛緩させた場合、界面活性剤作用によるDNA切断が亢進したことから、この系を利用してクロマチン構造変化を評価できる可能性が考えられた。 また、研究を進めていくうちに、熱処理が、DNase Iをリリースし、核内に移行させ、DNAを切断する同様のメカニズムでヒストンH2AXをリン酸化することを発見した。界面活性剤よりも簡便にDNase Iを核内移行させる方法が見出されたため、今後は界面活性剤の代わりに熱を使用した評価系の構築を考えていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進展している。まず、非イオン界面活性剤であるNonylphenol polyethoxylate、Tween 20、Triton X、Nonidet P-40、陰イオン界面活性剤であるLinear alkylbenzene sulfonateは作用後DNA二本鎖切断(DSBs)を誘導することを明らかにした。また、いずれも細胞死を誘導しない低い濃度でも検出可能であったこと、Deoxyribonuclease I (DNase I)の阻害剤で抑制されることから、これらDSBsが細胞死によるものでなく、DNase Iの核内移行によるものであることを示した。DNase Iの核内移行は、免疫染色法、細胞分画法により確認された。一方、陽イオン界面活性剤であるSodium dodecyl sulfate (SDS)はH2AXリン酸化を誘導しなかった。これは、SDSが、DNase Iの阻害剤であり、核内移行してもDNAを切断できないためと考えられた。よって、SDSは本研究が目指す評価系においては使用不可と判断された。 そこで、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤Sodium butyrate(SB)でヒストンを高アセチル化し、クロマチン構造を弛緩させた時に、界面活性剤を作用させ、DNA切断の変化について検討した。界面活性剤によるH2AXリン酸化や電気泳動法によるDNA切断が、SB作用により亢進したことから、この系を利用してクロマチン構造変化を評価できる可能性を示唆する知見が得られたといえる。 また、研究を進めていくうちに、熱処理が、DNase Iをリリースし、核内に移行させ、DNAを切断する同様のメカニズムでヒストンH2AXをリン酸化することを発見した。この発見は処理を簡便にするため、評価系をより実用性のあるものに近づける可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
熱処理が界面活性剤処理と同様にDNase Iをリリースし、核内に移行させることを明らかにした。熱は界面活性剤にくらべ、作用が容易に行えるため、今後は、熱を使用して、クロマチン構造変化のスクリーニングへの応用を目指す。 これまでに文献上でクロマチン構造変化を誘導する、ヒストンを修飾変化させることが既に明らかになっている化学物質を作用後、ヒストン修飾変化が認められる時間帯に熱処理を行い、DNA切断量を評価する。また、ミュータジェンであることが知られている化学物質や、逆にAmes試験陰性でも発がん性陽性とされる化学物質を中心に評価を行う。 さらに、多数の化学物質の評価の必要性を考慮して、本評価法をハイスループット化する方法を考案する。ヒストンH2AXリン酸化の検出をフローサイトメータで行うなどの工夫により、実用性のある評価系の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
ヒストンH2AXなどのウエスタンブロッティングや免疫染色法を効率よく行う工夫をし、使用抗体の節約をした。また、自身の健康上の理由により、予定していた学会に不参加であったため、その分が次年度使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
多様な化学物質のスクリーニング系に適した評価系を構築するために、多数の化学物質の購入などに充てる。また、実験補助者の依頼時間を増やし、研究を効率よく遂行する。
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Research Products
(6 results)