2015 Fiscal Year Research-status Report
人工知能の規範・倫理・制度に関する対話基盤と価値観の創出
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15K12435
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江間 有沙 東京大学, 教養学部, 講師 (30633680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋谷 直矩 山口大学, 総合科学部, 助教 (10589998)
服部 宏充 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (50455581)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人工知能 / 社会的影響 / 異分野間対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、人工知能に関する話題は多く、Google Glassなどのウェアラブルデバイスや自律的に走行・飛行するロボットカーが登場し、将棋・囲碁プレイヤーが人間に勝つまでになっている。一方で、プライバシー問題や法整備、今後の労働形態のあり方など考えるべき課題が山積みとなっている。これに対し、2013年には科学技術振興機構(JST)が「知のコンピューティング」の倫理的・法的・社会的問題(ELSI)への取り組みを展開するほか、人工知能学会も2014年に「倫理委員会」を設置するなど、人工知能の社会的影響についての異分野間対話の必要性が認識され始めている。まだ開発中の「人工知能」として取り上げられ話題になる技術だけではなく、膨大なデータをもとに行動や判断の指針を示してくれるサービスやシミュレーションなど、すでに我々の社会に浸透し始めている技術は少なくなく、その社会的影響についての議論が急務である。本研究では、平成27年度に(1)研究者間の対話プラットフォームを構築し、それをもとにして平成28年度に(2)人工知能研究のアジェンダ特定と規範・倫理・制度に関する価値観の創出を行うことを目的としている。対話を通して、人工知能の目指すべき共通アジェンダや社会の未来ビジョンを設計し、技術開発・実装時の新設計基準や規範・倫理・制度に関する価値観を提案する。それを、社会や学会、産業界などのフィードバックにかけながら洗練させることによって、(A)信頼に足る学際的なネットワークの構築、(B)人工知能と社会に関する研究における国際的イニシアチブの発揮、(C)研究者の社会的責任の醸成が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は主に(1)研究者間の対話プラットフォーム構築を目的とし、応用哲学会、科学技術社会論学会や人工知能学会にて積極的に企画や発表、情報収集を行った。また、メンバー間において各研究分野の問題意識や全体像を共有し、整理を行った。主な実績としては、2015年4月にHuman-Computer-Interaction (HCI)に関する世界最大の国際会議ACM CHI2015にて2014年に起きた人工知能の表紙問題を発端とした一例の事例研究について発表を行い、今後の人工知能技術を考える上での倫理的な側面や社会的な合意が必要とされている現状について分析を行った。今回の報告は「ケーススタディ」という位置づけでの発表であったが、ACM CHIでは、日本人が技術の話以外の発表を行うことはあまりないため、本研究が現在行っている「人工知能と社会」に関わる活動の今後の展開や情報発信に多くの意見や期待が寄せられた。また、5月には応用哲学会の「哲学と社会学は人工知能研究といかに協働できるか-人工知能が浸透する社会を考える」ワークショップにて、哲学者・倫理学者と意見交換をしたほか、6月には人工知能学会にて人工知能と倫理、社会の今後の展望についてのワークショップで発表を行った。その後も11月には科学技術社会論学会にて公開ワークショップを企画し、倫理学、哲学、科学技術ジャーナリズム、情報法、汎用人工知能研究者、マクロ経済学者、医療倫理の研究者のほか、独立行政法人科学技術振興機構や企業など異分野・異業種の方を交えた議論の場を持った。「アカデミアの役割」「規制と責任の在り方」など幅広いトピックについて議論を行い、人工知能と社会に関する議論の幅広さを再確認することができた。なお、これらの学会での活動については、WEBページ(http://web4ais.wpblog.jp/)にて報告書を掲載している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、前年度に引き続き様々な学会にて研究発表を行っていくと同時に、対話から生じたアジェンダや問題設定を具体化し、人工知能と社会を考えるための新しい価値観として研究者各位、実務者に普及展開していくため、社会的規範・倫理・制度設計標準を組み込んだプロトコルを作成することを目的としている。既存のODDプロトコルなど技術開発の標準設計指標などを土台とし、規範・倫理規定の傾向についての現在の動向と、それへの対応としてプロトコルがどのように機能するかの解説も記載する。さらに、プロトコルを実際にAI研究グループのメンバーが開発している技術に適用し、それらを学会で発表し、論文投稿を行うフィードバックを組み込むことによって、プロトコルを改善するサイクルへと展開をする。また、本プロトコルの基盤理念である人工知能を考えるための新しい価値観について普及展開を行っていくため、情報学系の学部・大学院、また研究所等などで授業や講習会を行い、教育プログラムを作成することも模索していく。作成したプロトコルに含まれる社会的規範・倫理・制度設計基準が一般社会や産業界や科学技術政策との整合性が取れているかどうかを確認するため、公開ワークショップを企画する。本研究が提案する価値観およびプロトコル案とそれにのっとって開発された人工知能技術の事例研究成果を発表し、指標としての信頼性や有用性に対する評価・感想を収集する予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に会合がある可能性があったため旅費などの費用として計上していたが、別財源から賄えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月以降、会合などを行うときの旅費などとして使用する。
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Research Products
(12 results)