Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは,最近,独自の戦略で物理的なストレスを最適化し,医療へ応用が可能な新たなPhysical Medicine (MES 55 pps) を開発した.近年,新規の特定条件の電流 (MES 5,500 pps) が,免疫抑制薬と同等以上の過剰免疫抑制作用を示し,かつ,まるで特異的な受容体を認識することを見出したが,その詳細な機序については不明である.そこで,本研究では,中枢性炎症を主徴の一つとするアルツハマー病 (AD) に着目し,MES 5,500 ppsがミクログリアの活性を制御し, AD 病態を改善しうるか種々の検討を行った. まず,マウスミクログリア細胞株 MG6, BV2 細胞を用いた検討により, MES 5,500 ppsが LPS 誘導性の IL-1β, IL-6 および MIP-1α の発現増加を顕著に抑制し, 中枢性炎症を負に制御することを示した. また, この作用は MES 5,500 pps処置の際に, 培養液中に産生された何らかの因子に起因することを明らかにした. 次に, 生物学的, 化学的, 物理的手法などあらゆる手法を駆使することにより, MES 5,500 pps処置により培養液中に産生される中枢性炎症抑制因子の網羅的探索を行った. その結果, 上記の中枢性炎症抑制因子の正体は, タンパク質成分および核酸成分ではない液性因子 X であることが分かった.最後に, AD 患者と極めて類似した病理を示す APPNL-G-F KI マウスにおける MES の有効性を評価した. その結果, MES 5,500 ppsは, AD 病態未発症の同マウスにおいて, MIP-1α の発現増加傾向を示し, また, AD 病態進行中の同マウスにおいて, IL-1β の発現減少傾向を示した. 一方, MES 55 ppsは総タウタンパク質の発現を減少させた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,新規のPhysical MedicineであるMES 5,500 pps刺激が,ミクログリアの過剰な活性化を抑制し,AD病態の一部を改善する可能性を明らかにした.また,そのメカニズムとして,MES 5,500 pps刺激により生じる液性因子の関与を明らかにするに至った.本発見は,MES 5,500 pps刺激が,免疫・炎症抑制作用を有するという仮説を裏付けるものであり,その作用機序に関する示唆を与えたため,当初予定の通り、研究が進んでいるといえる.
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