2015 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンCにより活性化される酸化型高分子ミセルを用いた超選択的がん治療法の開発
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15K12534
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Research Institution | Kawasaki Institute of Industrial Promotion Innovation Center of NanoMedicine |
Principal Investigator |
持田 祐希 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター), 川崎市産業振興財団, 研究員 (60739134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Cabral Horacio 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10533911)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / 高分子ミセル / がんの標的治療 / 金属錯体 / 酸化還元反応 / ビタミンC / 白金制がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属錯体を架橋点に含む高分子ミセルを酸化安定化することによって、ミセルの血中分解を完全に抑制しながらがん集積効率を最大限に高めることを第一の目的とし、腫瘍に集積した酸化型ミセルをビタミンCの静脈投与によって還元活性化することで、高濃度の抗がん剤で集中的にがん細胞を駆逐しながら、その抗酸化作用により正常組織へのダメージを低減する一挙両得ながん治療法を開発することを第二の目的とする。平成27年度は、白金抗がん剤ダハプラチン(II)を内包する高分子ミセルを過酸化水素で処理することにより酸化型ミセルを合成し、その物理化学的な物性評価と実験動物を用いた機能評価を行った。 ダハプラチン(II)内包ミセルに対して白金基準で100等量の過酸化水素を反応させたところ、ミセルに内包されたダハプラチンの60%の酸化数が2価から4価に増加することが確認されたが、ミセルの粒径は腫瘍のターゲッティングに適した30 nmが維持された。生理条件下における酸化型ミセルの分解挙動を追跡したところ、リン酸緩衝生理食塩水中でダハプラチンの放出やミセルの解離が完全に抑制されたが、還元剤であるアスコルビン酸(ビタミンC)ナトリウム(5 mM)を添加することによって、ダハプラチンの放出とミセルの解離が迅速に進行することが確認された。実験動物を用いて酸化型ミセルの血中動態を解析したところ、酸化型ミセルは、内包するダハプラチン(IV)の還元を抑えながら通常のダハプラチン(II)内包ミセルより2倍以上高い血中滞留性を示した。血中滞留時間が長いほどEPR効果によりミセルの腫瘍集積量が増大することが知られているため、酸化型ミセルを利用することで、既存のダハプラチン(II)内包ミセルより高い効率で腫瘍のターゲッティングを行うことができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、当研究課題の開始日に当たる平成27年4月1日に国立大学法人東京大学から公益財団法人川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンターに異動した。ナノ医療イノベーションセンターは平成27年4月1日に運営が開始された新しい研究施設であり、研究代表者は、初期メンバーの中心的立場で研究環境を一から整備する必要があったため、平成27年度は本研究課題に対して十分な時間を分配することができなかった。しかしながら、平成27年度後半には、研究分担者と綿密に連携することで非常に高い効率で研究を進めることができたため、平成27年度に計画していた実験の大部分を遂行することができ、概ね仮説通りの良好な結果を得るに至っている。そのため、当研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、平成27年度に構築した酸化型ミセルについて、がん細胞との相互作用を解析すると共に、がん疾患モデルを用いた体内動態や制がん効果、さらには正常組織に対する毒性の解析を行うことで、酸化型ミセルの抗腫瘍活性や安全性を確認する。また、酸化型ミセルの体内動態や抗腫瘍活性に対して還元剤アスコルビン酸(ビタミンC)ナトリウムの静脈投与が及ぼす影響を解析することで、本研究課題で提案する酸化型ミセルとアスコルビン酸ナトリウムの併用療法の有効性を実証すると共に、各薬剤の投与量及び投与スケジュールを最適化する。さらに、白金錯体以外の金属錯体を内包する高分子ミセルを合成し、過酸化水素による酸化処理とアスコルビン酸ナトリウムによる還元処理がミセルの安定性や機能に及ぼす影響を解析することで、本研究課題で提案する戦略の普遍性と有用性を検証する。以上の研究を通じて、酸化型ミセルの製法と構造及び酸化型ミセルとビタミンCの併用療法の2点について特許出願と学術論文化を進め、研究成果の将来的な社会還元を目指す。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画では、平成27年度中に酸化型ミセルの構造解析と物性評価を完了させ、実験動物を用いた実験を3回実施する予定であったが、酸化型ミセルの物性評価の試験項目として、アスコルビン酸ナトリウムの添加による影響の検証を加えたところ、仮説より速い速度で酸化型ミセルの還元反応が進むことが明らかとなり、その現象の解析と無生物系における機能評価を重点的に行ったため、費用のかかる実験動物を用いた実験を1回しか行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、平成27年度中に実施する予定であった動物実験2件(上記)を引き続き執り行う予定であるため、平成28年度への繰越使用額は、この動物実験を実施する目的で使用する予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Vascular bursts enhance permeability of tumour blood vessels and improve nanoparticle delivery2016
Author(s)
Yu Matsumoto, Joseph W. Nichols, Kazuko Toh, Takahiro Nomoto, Horacio Cabral, Yutaka Miura, R. James Christie, Naoki Yamada, Tadayoshi Ogura, Mitsunobu R. Kano, Yasuhiro Matsumura, Nobuhiro Nishiyama, Tatsuya Yamasoba, You Han Bae, Kazunori Kataoka
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Journal Title
Nature Nanotechnology
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Eradication of CD44-variant positive population in head and neck tumors through controlled intracellular navigation of cisplatin-loaded nanomedicines2016
Author(s)
Ming Wang, Yutaka Miura, Kenji Tsuchihashi, Kazuki Miyano, Osamu Nagano, Momoko Yoshikawa, Ami Tanabe, Jun Makino, Yuki Mochida, Nobuhiro Nishiyama, Hideyuki Saya, Horacio Cabral, Kazunori Kataoka
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Journal Title
Journal of Controlled Release
Volume: 230
Pages: 26-33
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] A Nanoparticle platform to evaluate bioconjugation and receptor-mediated cell uptake using crosslinked polyion complex micelles bearing antibody fragments2016
Author(s)
Stelios Florinas, Marc Liu, Ryan Fleming, Lilian Van Vlerken-Ysla, Joanne Ayriss, Ryan Gilbreth, Nazzareno Dimasi, Changshou Gao, Herren Wu, Ze-Qi Xu, Shanoyi Chen, Anjaneyulu Dirisala, Kazunori Kataoka, Horacio Cabral, R. James Christie
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Journal Title
Biomacromolecules
Volume: 17
Pages: 1818-1833
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] In vivo evaluation of neutron capture therapy effectivity using calcium phosphate-based nanoparticles as Gd-DTPA delivery agent2016
Author(s)
Novriana Dewi, Peng Mi, Hironobu Yanagie, Yuriko Sakurai, Yasuyuki Morishita, Masashi Yanagawa, Takayuki Nakagawa, Atsuko Shinohara, Takehisa Matsukawa, Kazuhito Yokoyama, Horacio Cabral, Minoru Suzuki, Yoshinori Sakurai, Hiroki Tanaka, Koji Ono, Nobuhiro Nishiyama, Kazunori Kataoka, Hiroyuki Takahashi
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Journal Title
Journal of Cancer Research and Clinical Oncology
Volume: 142
Pages: 767-775
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Polymeric Micelle Platform for Multimodal Tomographic Imaging to Detect Scirrhous Gastric Cancer2015
Author(s)
Yutaka Miura, Atsushi B. Tsuji, Aya Sugyo, Hitomi Sudo, Ichio Aoki, Masayuki Inubushi, Masakazu Yashiro, Kosei Hirakawa, Horacio Cabral, Nobuhiro Nishiyama, Tsuneo Saga, Kazunori Kataoka
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Journal Title
ACS Biomaterials Science & Engineering
Volume: 1
Pages: 1067-1076
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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