2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子多型を手がかりとする瞬目発生の制御神経機構の解明
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15K12620
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 珠実 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90589201)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自発性瞬目 / アセチルコリン / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは眼球湿潤に必要な数の何倍も瞬きをしている。何のために頻回に瞬きをするのか、未だに大きな謎である。本研究は瞬きの頻度の大きな個人差に着目し、その個人差を生み出す神経機構を明らかにすることで、自発性瞬目の機能的役割までも明らかにすることを目指している。 そこで、本研究プロジェクトでは、ドーパミンやセロトニン、アセチルコリンなどの主要な神経伝達物質の遺伝子多型によって、映像を8分間自由に見ているときの自発的な瞬目率に違いがあるかを調べた。100名以上の健常な成人のデータを集めることで、従来考えられていたドーパミンではなく、ニコチン性アセチルコリン受容体をコードしている領域の遺伝子多型によって、自発性瞬目率に有意な違いがあることがわかった。ニコチン性アセチルコリン受容体は、黒質ドーパミン細胞の主要なプレシナプス受容体であるため、その受容体の活性化のしやすさが、瞬目率の大きな個人差を生み出している可能性が考えられる。そこで、このアセチルコリンを黒質ドーパミン細胞に放出している脳幹の脚橋被蓋核が自発的な瞬きに伴って活動を増加させているかをfMRIにより調べた。その結果、脳幹の一部で活動が増加している領域はみつかったが、脚橋被蓋核の活動変化を捉えることはできなかった。 つぎに、瞬きの個人差と相関して脳の容積が変化している領域があるか、という全く別のアプローチから、瞬きの個人差を生み出す神経機構を明らかにすることにした。具体的には、54名の健常な成人の脳の構造画像をMRIを用いて撮像し、さらに、映像を見ているときの瞬きの頻度も計測した。その結果、右の角回が瞬きの頻度の高い人ほど、灰白質の量が大きいことを発見した。さらに、その領域のをTMSを用いて阻害したところ、瞬きの頻度が低下することを示した。以上の結果を論文にまとめて、国際英文誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
瞬きの個人差と相関する脳の領域をMRIの構造画像に基づくVTM法により同定し、さらに、その領域をTMSを用いて活動阻害することで、瞬きの頻度が低下することを示した。瞬き発生との相関だけでなく因果関係まで示しすことで、瞬き発生の神経機序の解明に大きな貢献をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
瞬きの発生の個人差を生み出す脳の領域を同定できたので、今後は、その領域が脳梗塞などの病気などで障害を受けた人を対象に、瞬きの発生がどのような影響を受けているかを調べる。さらに、発達に伴い瞬きの頻度も大きく増加することから、当該脳領域の発達と瞬きの発生頻度の変化の関係を調べる。
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Causes of Carryover |
刺激提示ならびにデータ解析用のパソコンの購入を予定していたが、希望していたスペックに見合うものがすぐに納品できなかったため、今年度は既存のパソコンで対応した。 さらに、既存のデータを使って新規のデータ解析をしたため、その分、実験協力者への謝金がかからず、人件費が当初の計画を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
画像処理のスペックが高いPCが発売されたので、それを今年度購入する。さらに、新奇なデータを集める実験を計画しており、実験協力謝金と装置の使用料で次年度中にすべての予算の使用が見込まれる。
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Research Products
(9 results)