2016 Fiscal Year Research-status Report
体育教師の専門的力量形成に関するライフヒストリー研究
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15K12632
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木原 成一郎 広島大学, 教育学研究科, 教授 (20214851)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 体育科教育 / 教師教育 / ライフヒストリー / 授業スタイル / 教職経験 / 教師の信念 / 小学校体育専科教師 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年次の本年度は、元小学校体育専科教師の林氏に対して、1年次に行ったライフヒストリーインタビューの成果に基づき、林氏の体育授業の実践報告に関する「授業スタイル」の形成と変容の過程について調査した。 この「授業スタイル」の形成と変容は、林氏の膨大な実践報告の蓄積について、木原が仮説的に設定した発展段階ごとに、その段階の主な実践報告の特徴について、木原と林氏と大後戸氏のインタビューを通して共同で構築した。 構築した語りを文字化した文章を再度木原が解釈し文章化した。さらに、木原の解釈の妥当性を高めるため、その文字化した「授業スタイル」の形成と変容の構築物について、林氏の「メンバーチェック」を受け、疑問点について意見交換を行い、必要な部分の修正を行った。さらに、大後戸氏の「仲間同士での検証」によるチェックを受け、疑問点について意見交換を行い、必要な部分の修正を行った。 この過程を経て構築した林氏のライフヒストリーにおける「授業スタイル」の形成と変容の過程について、日本体育学会大会で発表し、識者のコメントをいただき、考察を深めるとともに解釈の修正を行った。 林氏の小学校体育専科教師のライフヒストリーにおける「授業スタイル」の形成と変容の過程の分析を通して以下のことが明らかになった。「授業スタイル」の変容の契機は,第1に,「運動教材の技術的内容に関する専門性が不足しているという不安」や「器械運動において苦手な子どもの技能指導に行き詰まる」という困難の経験であった。また第2の契機は,「学校体育研究同志会,中村敏雄氏との出会い」「『スポーツ運動学』(クルト・マイネル)から,運動経過の「他者観察」と「自己観察」の概念を学んだこと」「出原泰明氏の教育内容論の摂取」という体育理論の学習にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた林氏の小学校体育専科教師のライフヒストリーにおける、教師の信念の構造と変容、「授業スタイル」の形成と変容過程について、インタビューの語りと実践報告の解釈から構築し、その成果を学会と学術論文として発表することができたため、おおむね順調に進んでいると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になる本年の第3年次は、すでに昨年度の後半に行った中学校保健体育専科教師の小田先生のインタビューを文字化して解釈し、保健体育専科教師としての信念の構造と変容を明らかにするとともに、実践報告の内容についての解釈をインタビューの語りとクロスさせて、「授業スタイル」の形成と変容過程を明らかにする。 そして、本研究の成果を体育関連学会で発表し、識者のコメントをいただいてその解釈の妥当性を高めていく。
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Causes of Carryover |
当初分析対象として予定していた中学校教師の塩貝氏が体調がすぐれないため、インタビューを断念せざるを得なかった。そのためインタビューの講師謝金や資料整理謝金の支出がなされなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
小学校体育専科教師の林氏のライフヒストリーについて、教師としての信念及び「授業スタイル」の形成と変容の過程について独創的な成果を入手することができた。また、本年度に中学校保健体育専科教師の小田氏の教師としての信念及び「授業スタイル」の形成と変容の過程を分析し、その成果について識者の意見をいただくため、国内外の体育関連学会で発表するための旅費として支出する計画である。
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Research Products
(3 results)