2016 Fiscal Year Research-status Report
自然保護地域におけるICTを活用したスマートツーリズムと実践型観光学教育
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15K12802
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Research Institution | Wakkanai Hokusei Gakuen College |
Principal Investigator |
浅海 弘保 稚内北星学園大学, 情報メディア学部, 教授 (90405712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ゴータム ビスヌ・プラサド 稚内北星学園大学, 情報メディア学部, 准教授 (90615494)
藤崎 達也 稚内北星学園大学, 情報メディア学部, 准教授 (40710398)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | STPF / 自然保護地域 / 環境保全 / セキュリティ / Smart Tourism / VR / MR / AR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の観光学では解決が困難な諸問題に対して、ICTを導入したスマートツーリズムという新たな概念を形成し、旅行者ならびに観光地の生活者双方に対し、安全性、利便性を高めるソリューションを提供し、その有効性を評価することが目的であった。 平成28年度の計画では、STPFの具体的な実装と試験的運用を開始する予定であった。これについては、前年度中に前倒しで開発を勧め、実装は今年度に完了した。システムのテストとプロファイリングは現在実施中である。27年度に実施しなかったインフラ整備については、国内で使用可能な無線通信機器を調査と選定を行い、富士通ネットワークソリューションズ株式会社の協力を得て、稚内―利尻間の長距離(41km)無線の通信実験を行った。実験結果は、下記の通りであった。(1)通信レートは、6.5~26Mbpsの範囲であり、映像のストリーム通信は十分可能であると判明した。(2)無線機の通信エラーが派生し、原因は、支柱等に固定しなかったと特定された。この問題は、運用の際は改善される。しかし、継続的な運用には、無線機器の購入と設置が必要となるが、本研究費総額の2倍を超え、本研究期間中の設置は見送った。その他、礼文島へのSTPFの展開については、希少種の保全のための業務プロセスは、登山者の安全管理プロセスと類似するため、利尻富士登山に関するSTPFに限定した。登山者の行動パターンの情報収集はスマートフォンを携帯した観光者のトラキング機能としてSTPFに実装した。 また、DMOとSTPFの関係強化と人材育成カリキュラムとの連携を図るため、学部学生のソフトウェア製作演習において、DMOを推進するために必要となるデータの継続的収集と分析を行い、STPFにこの機能を実装した。観光業者が、リアルタイムかつ最適な観光サービスの提供がSTPFの利用によって可能となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度実施報告書に記載の計画変更により、未実施だった通信インフラの整備を行うとともに、27年度に開発を行ったSTPFの具体的な実装とテスト・評価を行うことであった。通信インフラの整備については、27年度苦慮した、ネットワーク機器の選定と購入は、電波法等の規制と研究費の制約により困難であると判断した。機器購入の代替として、長距離無線通信機器は、富士通ネットワーク株式会社の貸与により、通信実験を行った。STPFの通信環境としての可能性は十分あるとわかった。ただし、使用した無線ネットワーク機器を実装するには、650万円の資金調達が別途必要である。1.行政の支援により実装する。2.長距離無線通信は各市町村にある衛星通信回線、または商用回線で接続し、無線機器を用いた通信は8㎞以内の近距離通信に限る。上記2つのモデルを、問題の回避策として提案した。また近距離の無線通信については電力供給がない場所に設置するため、近距離無線通信機器を4台購入と、電力供給システム2組の実験を行った。STPFの実装とテスト・評価については、STPFのモジュールとして、VR等のアプリケーションを開発中であり、開発完了後、直ちにテスト・評価を行うことができる。29年度計画の「平成27,28年度の実証実験の知見をもとに、ICTで解決すべき領域について再評価を行う」との不整合が生まれるが、実証実験の評価により新たな課題が発見されると考えられる。また、無線による通信は近距離のみとすることで、利尻富士9合目付近ー利尻町役場間の無線通信を、稚内市観光案内所-100周年開基記念等間の無線通信に置き換える等の措置をとり、実証実験の実施も短期間で完了できる。従って、STPFのテスト評価とSTPFのドメイン分析は期間を短縮して行うことが可能である。研究費の問題から計画変更があったが、その後の進捗状況は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成27年度、平成28年度の研究計画の変更に伴い、通信インフラの整備については、無線通信は近距離通信(8km以内)に限り、購入した無線機器を数カ所に設置して整備する。整備された通信インフラの下、STPFのテストと評価を行う。評価の方法は、人材育成の観点からゼミの学生に対して、アンケート形式で行う。評価で得られた知見をもとに、ICTで解決すべき領域について再評価を行う。 1.冬山を想定した安全管理(droneによる遭難捜索)人手による捜索との比較、およびdroneによる遭難者発見の定量的計測を行う。希少種監視については、Webカメラによる定点観測と、一定軌道を巡回するdroneによる監視とで効果を比較する。旅行者、環境業者に対しては、MRの実装による観光情報の提供のあり方などを評価対象とし、アンケート形式で評価を行う。本研究で実装したSTPFのプロトタイプの検証を利尻町で2回程度実施する予定であったが、先の計画変更に伴って、検証地は稚内市とする。検証の回を重ねるごとに精度を上げるための仕掛けを用意する。 研究対象の地域は、気象条件が厳しい状況にあるため、ネットワークの不安定性が懸念される。そのため、STPFにNagiosなどの監視システムを導入し、本研究で利用されるネットワークインフラの継続的な監視を行う。また、必要に応じて、本STPFシステムの通信インフラである有線・無線ネットワークの整備、管理及びメンテナンスを行う予定である。また、Droneの運用に際して、事故を防ぐため、定期的点検や部品交換を適宜行う。 STPFの全体の評価としては、Workshop及びセミナーなどを開催し、多くの国内研究者、関係企業の参加を呼びかける。セミナー、Workshopを通じてSTPFの品質向上のため、ステークホルダのアイデアを募り、29年度以降の研究に反映させる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、27年度の計画の変更に伴い、購入予定のネットワーク機器及び電源蔵置器の購入を28年度に行い、STPFのと開発と実装に関するテストと評価の時期が当該年度の後半にシフトしたためである。一部の無線機器の研究期間中の設置と運用を見合わせたため、ドローンによるオンラインの継続的な情報収集は実施されず、研究発表内容の一部修正を行ったので、そのための予算執行は29年度に繰り越された。 さらに、総務省が発表した、遠隔操作による飛翔体の操縦は目視を前提としており、自動運転が不可能になったことも計画変更の要因となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に予算措置が施されている旅行者の安全管理に使用するドローンのメンテナンス部品とセンサーモジュールに関する物品の購入を行う。また、27年度、および28年度に繰り越されてきた予算の29年度は、すでに設立されているDMOの組織整備に予算を振りわけ、STPFとの連携モデルを確立するための予算を確保する。DMOとSTPF連携モデルのテスト運用と評価を行い、国内・国外研究発表を行う予定である。論文投稿と研究発表旅費について、繰り越された予算の執行を行う計画とする。
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