2016 Fiscal Year Research-status Report
感興に基づく即興の機序の解析、並びに機知や機転の成り立ちを考察する試み
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15K12808
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗原 隆 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30170088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻元 早苗 有明教育芸術短期大学, 芸術教養学科, 教授(移行) (20155378) [Withdrawn]
鈴木 光太郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40179205)
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40509444)
白井 述 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50554367)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 感応 / 主観的精神 / 即興 / 感興 / 人間学 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際シンポジウム「1800年頃の哲学と人間学」を5月21日(土)に「ときめいと」講義室で開催、阿部ふく子、栗原隆がそれぞれドイツ語で発表Paul Ziche教授(ユトレヒト大学)が"Der Mensch zwischen Natur und Kunst ― Zur systematischen Position des Menschen in der Philosophie und Anthropologie um 1800"を発表、ドイツ観念論哲学の問題圏における感興や機知などの主観的な精神の働きに光を当て、解明を進めた。 9月25日(日)に新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」にて公開研究会「自然の移ろいと精神の対話」を開催、栗原隆は「自然の詩情と精神の忘恩」を、古田徹也が「『道徳的運』再考――現代の英米圏の議論をめぐって――」を、細田あや子が「『井戸の中の男』『一角獣と男』『月日の鼠』の図像伝承」を、辻元早苗が「舞踊作品における発想・主題とその表現方法について―― 作品『うつろい』に表された自然と人間との呼応、ジャンルを超えた身体と魂の対話――」を、それぞれ発表、舞踊における感興と即興の機序を、身体と精神との対話として、新たな問題設定をする中で解明することができた。 12月16日(金)17時から新潟大学総合教育研究棟「D301」において、「ヘーゲル・アーベント」を開催、栗原が「ヘーゲルにおける哲学的人間学の射程と感応の行方」を発表、「感応(Stimmung)」という感興の働きの解明にあたった。 2018年3月18日に、新潟市の「ジョイア・ミーア」にて、河野祐亮トリオと栗原がライヴ・パフォーマンスを実施、即興が、リズムとグルーヴに支えられることを実地に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際シンポジウムを開催することを通して、感興や即興、機知などの働きを支える「主観的精神」についての研究成果を国際的に発信することができたのが大きい。これにより、最終年度は、栗原が、ユトレヒト大学に招聘され、ドイツ語でワークショップに臨むことになるのも、望外の成果である。 また、異分野であるものの、舞踊家の辻元早苗氏による自らのパフォーマンスの解析は、「感興」や「即興」の機序の解明に当たり、極めて大きな示唆を与えるものであるとともに、舞踊美学などの新たな道筋に光を当てるものであった。 また、河野祐亮トリオとのライヴ・パフォーマンスにあっては、即興を支えるのはリズムとグルーヴであるという新たな認識を得ることができた。 以上のことから、「当初の計画以上に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
「感興」や「即興」さらには「機知」や「機転」が生ずる境地を、ヘーゲルは「主観的精神」に見定めたことにより、ヘーゲルの『精神哲学』のなかの「主観的精神論」の解明にあたることになるとともに、実験心理学での成果とのすり合わせが今後の課題となる。 更には、夏にもユトレヒト大学に招聘され、「Poesie der Natur und Undankbarkeit des Geistes」を発表することにより、さらなる国際的な研究交流が広がることが目指される。 さらにまた、「即興」の機序をさらに明らかにするために、河野祐亮トリオと栗原のライヴ・パフォーマンスをもう一度試みる中で、律動(リズム)が生命感覚と結び合うことを実証することを目指したい。
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Causes of Carryover |
招聘したPaul Ziche教授が、仙台から新潟への移動に当たり、家族同行だったため、交通費を科研費から支出することを見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内学会への出張の交通費として用いる意向である。
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