2016 Fiscal Year Research-status Report
精神性の進歩に関する自然発生的説明の検証―フロイトのモーセ論が示す推論装置の射程
Project/Area Number |
15K12816
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 靖子 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70262483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
シュラルプ ハンス・ミヒャエル 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (00585565)
安川 晴基 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (60581139)
大平 英樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90221837)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 推論装置 / 精神性の進歩 / 啓蒙主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フロイトが最晩年の著作『モーセという男と一神教』において展開した『精神性の進歩』を鍵語に、集合的記憶概念と身体記憶という双方向から検討し、フロイトのモーセ論に対しても、また現代における「精神性の進歩」とは何かという問いに対しても、新たな展望を売ることを目的としていた。 その上で、今年度は、年に二回(一度は三日連続、二度目は二日連続)で全日の研究会を開催した。会には院生など若手の研究者にも多く参加を呼びかけ、Karl EiblのEntstehung der Poesieをテクストとしてこの内容に関する議論をベースとして、ルーマンのテクストや18世紀啓蒙主義で時代を画し、かつ当時、人間観、恋愛観、家族観、道徳観などの幅広い領域にわたって人々の精神面に絶大な影響を与えたと思われる文学作品(レッシングの諸作品、ゲーテの諸作品など)の再読・解読を試みつつ、議論を進めた。二回目には、同じくEiblのテクストを議論の土台としつつ、18世紀に整えられた礎が、二十世紀前半に至るまでの精神史において、いかに継承され、かつ、その過程に置いて変容を遂げたかについて議論した。また、今後の研究の進め方について、さまざまな可能性を検討しつつ、将来的には一冊の論集をまとめることを視野に、テーマ設定や、それまでの途中段階に置いて成果発表について話し合った。また、代表者は、「精神性の進歩」という観点について、現代社会から見た将来の人間のありようをめぐる考察を展開し、論文として成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に計画したとおり、研究会を二回(三日連続を一回、二日連続を一回)開催し、多くの若手研究者らの参加を得て、多方向的な議論を展開することができた。また、参加者らがそれぞれバックボーンとする専門分野において、本研究テーマがいかなる意義を持ち、どれほどの射程を得られるかについて、活発に議論することができた。これらの研究会や、さらにはそれ以後、それ以前のメールを通した意見交換、情報交換により、各自、それぞれに成果を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度に当たるので、これまで各自の専門分野で発表してきた成果を、公開シンポジウムなどのように、共同の研究成果として発表するために、テーマの絞り方、メンバー以外の参加者の可能性、開催時期と場所について、さらに話を具体化させる。また、平行して、これまでの研究成果を踏まえた上で、次年度以降、さらに共同研究を進めていくために、後継の共同研究の企画・構想について議論を進める。その際には、若手研究者の参加を視野に入れ、かつ、さらに多領域の研究者間で本研究の議論の展開を共有しつつ、方向性を探る。
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Causes of Carryover |
絶版書など、古書でしか入手できないほんの納入時期が確定せず、結果年度をまたぐ形になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度内に納入が間に合わなかった図書などについて、次年度になってから、これらの図書の支払い等に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)