2015 Fiscal Year Research-status Report
簡易写真測量とGISの狭域運用による火山・地震性地形変動と人間活動の関係性の研究
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15K12944
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩城 克洋 東京大学, 総合文化研究科, 特任研究員 (70588227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 俊輔 千葉大学, 文学部, 准教授 (10409740)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 情報考古学 / 写真測量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度はまず2015年4月から5月にかけて北海道礼文町浜中2遺跡の第5次発掘調査において、環境・人員などの面で制約の多い状況下での堆積層断面図や周辺微地形の測量平面図などの各種計測作業を写真測量によって行った。さらに2015年8月から9月にかけてイタリア共和国ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡の第13次発掘調査において、火山性土石流による自然堆積と人工堆積が混在する大深度の大規模堆積層断面の一括三次元計測を写真測量によって行った。つぎに2015年9月に千葉県南房総市永野台遺跡の第1次発掘調査において、地震性の地殻変動による隆起・沈降などの局地的な地形変化の影響が考えられる堆積層断面について、従来の手法による測量作業と併行して写真測量による三次元計測を行い、成果を比較検討した。また永野台遺跡においては、傾斜地における5m前後の低高度からの俯瞰撮影による写真測量の手法の有効性も検証した。これらの異なった環境条件における写真測量による各種の三次元計測データの効果的な収集方法の確立とそれに伴うデータの蓄積と並行して、既存の低縮尺周辺地形図やボーリング調査のデータとこれら収集データを連携して一元的な可視化データに変換する作業を行った。また、これらに付随して、浜中2遺跡における出土遺物の写真測量による三次元データ化作業を行い、約450点の遺物の三次元モデルを生成した。ここまでの作業で、考古学的調査において収集される地形測量図・平面図・断面図・遺物実測図それぞれについて、各種の制約を受ける中で写真測量によって効率的に三次元データ化して収集する手法を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度中に行った計3回にわたる遺跡の発掘調査にともなう現地での写真測量による現地での三次元データの収集においては、それぞれの調査現場において、異なる各種の制約があったが、以前から試験的に行っていた写真測量における現場レベルでの計測作業での問題点について、試行錯誤の結果、ほとんどの点について解決することができた。これら技術的な計測作業方法の確立の結果として、3回の調査においては、質・量ともに十分なレベルの三次元データを収集することができた。2015年度の課題としては、計測作業方法における各種問題点の解決と十分な量のデータの蓄積を考えていたので、現時点でこれら課題はおおむねクリアできたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度はまず北海道利尻富士町沼浦海岸遺跡における発掘調査において、前年度の運用を受けて改良したシステムで堆積層断面図、周辺地形測量図などの写真測量を行う。その後、イタリア共和国ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡、千葉県南房総市永野台遺跡においてそれぞれの遺跡の特性に合わせた体制で同様の写真測量を行う。これらの作業と並行して、各種三次元データを統合して一元的に可視化した資料を利用し、GIS上に展開することによって、遺跡における各種の微地形変動が人間活動に及ぼす影響を視覚的に分析することを試みる。特に、現時点での資料の蓄積状況に鑑みて、浜中2遺跡における海面との地点比高差の変遷による活動様態および活動利用域の変遷、ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡における大規模な土石流による急激な地形変動が建造物構築時の地点選択に与える影響の分析の2点について、重点的に研究を推進する。
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Causes of Carryover |
2015年度後半における原油価格の低下および為替変動による、海外出張時の航空券燃油サーチャージの減少などによって、旅費支出額が若干圧縮されたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度においても原油価格、為替変動の影響はあると考えるので、旅費および洋書の購入予定などに関しては若干の幅をもって考えている。次年度使用額に関しては基本的にこの幅部分が支出の増大方向に振れた場合の担保として考えているが、年度後半において見通しが立った段階で、余剰があるようであれば、論文の投稿および報告書の作成費用に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)