2015 Fiscal Year Research-status Report
社会実態調査に即したヘイト・スピーチ規制の総合的研究
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15K12974
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
金 尚均 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (00274150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 一成 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10725188)
山本 崇記 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80573617)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大阪市ヘイトスピーチ条例 / ヘイトスピーチ / 被害実態調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の実績として、1.大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例への市民対案の作成への関与、2.民族学校などのコリアルーツをもつ高校生1483人年に「差別被害に関する実態調査」の実施がある。 大阪市条例は、日本において、いわゆるヘイトスピーチに対処することを目的とした初めてのものである。日本政府は1995年に人種差別撤廃条約に加入したが、未だこれに規定されている政府の義務を履行するための国内法の整備は行われていない。国レベルで人種差別に対処する法律がない中、大阪市が独自に条例を制定したことは、日本の社会状況への俊敏な対応と同時に、人種差別を許さないという世界のグローバルスタンダードへの接近をも意味している。 本条例の制定の動きのきっかけは、2014年7月8日京都朝鮮学校襲撃事件の民事裁判で大阪高裁は1審判決を支持し、在特会側の控訴を棄却したことを受け、その2日後、当時の橋本市長がヘイトスピーチ対策を検討すると発言したことにある。9月3日、橋本市長は大阪市人権施策推進審議会に「ヘイト・スピーチに対する大阪市としてとるべき方策について」諮問、同審議会に「憎悪表現に対する大阪市としてとるべき方策検討部会」が設けられ、計6回の会議が行われ、審議を重ね、その答申として、「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例案要綱(案)」が出された。この間、10月20日、橋下市長と「在日特権を許さない市民の会」の桜井誠会長との会談がなされ、市長から、桜井氏に対し、「おまえみたいな差別主義者は大阪にはいらない」「民族をひとくくりにして語るな」等、在特会の主張が差別にあたることが明言された。大阪市は、15年5月22日、ヘイトスピーチ(憎悪表現)を抑止するための条例案を市議会5月定例会に提出したが、審議未了のため、継続審議となったが、この度、在日韓国・朝鮮人の人々による運動も奏功し、ようやく成立することになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例への市民対案の作成に関与できたことは、研究の進捗にたいへん有益であった 民族学校などのコリアルーツをもつ高校生1483人年に「差別被害に関する実態調査」の実施が可能になり、被害実態が明らかになりつつある。。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパ諸国における差別被害実態調査の諸成果を参照し、日本の実態との比較研究を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度においては、もっぱら実態調査並びアンケート質問項目に関する前提研究に力点が置かれた。そのため、主に、に、研究分担者個々の個人的見解をまとめ、これを相互に精査した。この作業により具体的な質問項目を作成するのための十分な準備ができた。そのため、インタビューやアンケートにかかる費用などが次年度に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・研究分担者による被害当事者に対するインタビュー実施、被害当事者による民事裁判提訴の過程ならびその後の裁判過程を調査、被害実態調査の実施。
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Research Products
(2 results)