2016 Fiscal Year Research-status Report
宗教系団体等が所蔵する幻燈史料の記録化と分析による道徳観成立へのアプローチ
Project/Area Number |
15K13194
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Research Institution | Naragakuen University |
Principal Investigator |
山本 美紀 奈良学園大学, 人間教育学部, 教授 (60570950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊崎 一夫 奈良学園大学, 人間教育学部, 教授 (10574113)
阿尾 あすか 奈良学園大学, 人間教育学部, 専任講師 (30523360)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | キリスト教 / 救世軍 / 幻燈 / 劇場 / ロンドン / 社会調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は、前年度に引き続き、国内外の幻燈史料調査を行うと共に、研究過程で得た新たな情報に基づく資料調査を随時行ってきた。また、H27年度のロンドンでの調査で収集した資料について、デジタルデータ化を進め、さらに整理を行った。また、救世軍における幻燈スライドの使用、および上映場所について比較検討を行い、両者の特徴と共に、社会的に与えた影響について総合的に検討を行った。比較検討の資料としては、当時の出版物も考慮し、幻燈作品について日本の全体的傾向や特徴を抽出。さらに倫理・道徳観教化に用いられたものを中心に日本的特徴を分析した。 特に、上映場所の比較からは、幻燈集会を行うにあたって両救世軍の場が、既存の施設であり、必ずしもそれが教会に由来するものばかりではなかったこと、また、幻燈そのものがもつ娯楽的要素と観客層から、娯楽と伝道/教育が近接し、ともすれば他の数ある娯楽との一つとして同等に受け止められる恐れがあったということがわかる。 そう考えるならば、イギリスで幻燈を集会に用いることへの警戒も理解でき、日本における救世軍伝道も、同じような危険性にいつもさらされていたということが推測できるのである。もともとキリスト教の基盤のない日本の一般大衆への伝道に、キリスト教の教理をそのまま伝えることは困難であり、娯楽的要素を取り入れて展開しようとしていくことは手段として必要だっただろう。しかし、その状況に対しての過度な娯楽性への警告は、いったいどの視点で行われてきたのであろうか。その警告を受け入れた結果、キリスト教伝道は、必要以上に教義・教理的な内容に引きずられる傾向があったのではないか。そこに現代の課題にも共通する問題があると考えられる。 これらの成果をふまえ、さらに史料分析をすすめ、幻燈史料と上映の場の両側面から制作者側の意図及びその効果を考察を深めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現存する資料に関する評価分析については、順調に進んでいる。しかし、スライド上映の台本など、スライドに添付されているはずの紙媒体資料が戦災等のため、なかなか残っておらず、細部までの再現が難しい。そのため、新聞資料や当時の報告書などの記述を確認する必要があり、予想以上に時間がかかっている。そのほかの点については、当時の大衆芸能と倫理観・道徳観へと研究の広がりが予想され、良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
紙媒体資料が残っていない幻燈ガラススライドについては、当時の上映について、新聞等の報告などで埋め合わせ、内容の推定をしていく必要がある。同様に、当時の社会状況において課題と認識されていたこと、また政策なども確認し、宗教団体の用いた幻燈が、それらとどのような関わりがあったのか、明確にしていく。H29年度は、さらに他の日本の宗教団体の活動を考察の際に取り入れ、より正確な分析を目指したい。
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Causes of Carryover |
日本国内で予定していた調査が、調査先の確定に時間がかかり、また、戦災など様々な理由で散逸してしまっていたりなどし、予定していたものが収集できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度中に、所在を確認できたものについて、すみやかに対応し、資料収集に努める所存である。
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Research Products
(5 results)