2015 Fiscal Year Research-status Report
偏見の低減のための教育-ヒューマンライブラリーの効果研究
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15K13212
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
坪井 健 駒澤大学, 文学部, 教授 (00119108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 和宏 獨協大学, 外国語学部, 講師 (70364726)
横田 雅弘 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90200899)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 偏見の低減 / 自己開示 / 自己概念の拡大 / 視野の拡大 / ヒューマンライブラリーの多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒューマンライブラリー(以下HLと略す)の実践の教育的効果に関する学術的調査研究の一環として平成27年度は1.偏見の低減理論や本研究に関連する文献の収集(横田)。ただし、HL関連の文献は内外ともに少なく国内出版の文献はほぼそろえた。偏見に関する文献も国内出版文献はほぼそろえることができたが、海外文献については今後とも継続中である。 2.HL参加者に対するアンケート調査及び面接調査を実施した(坪井・横田)。具体的には、過去のHL参加者アンケート調査データを可能な限り収集し整理した。平成27年度の明大HL、立川HL、横浜中央図書館HL、奥沢HL、円覚寺HLに関しても主催者の協力を得て、アンケート調査を実施し、200サンプル弱の有効回答を得た。参加者のインタビュー調査も玉川HL参加者・川口HL参加者・長崎HLを中心に10名程度実施した。3.ヒューマンライブラリー主催者へのインタビュー調査も川口HL主催者、長崎HL主催者、麗澤大学HL主催者を中心に3名実施した(坪井・横田)。4.オーストラリアでは、西オーストラリア州パースとタスマニア州二都市(ローンセストン、ホバート)にてインタビューおよび参与観察を行った(工藤)。それらの結果、①偏見の低減効果をアンケート調査で明確に検証するに至っていないが、参加者の体験レポート等で確認することができた。②アンケート調査結果からは、HL参加が読者の自己概念の拡大、視野の拡大に効果が大きく、自己の問い直しに効果的だということが証明された。生きた本に対しても自己開示の効果が大きく、生きる勇気、自信など肯定的自己概念形成への効果が確認された。 オーストラリア調査からは、HLの運営方法の多様性が明らかになり、HLの効果については個人と(運営方法を含む)環境の関係を捉える概念的枠組が有効であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、事前・事後の態度変容を数量的に測定する予定であったが、事前の準備が十分できなかったことや実際のイベントの中で条件をコントロールして事前調査に協力してもらうことが難しく、アンケート調査が万全にはできなかった。また、年度の終わりに多くのHLが重なっていたために、年度内に事後インタビュー調査も十分実施できず、次年度に持ち越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、1.HLの効果に関して既存研究と本研究結果を照合しながら分析的に理論的研究を進める。2.引き続きHL主催者の協力を得て読者・本等のアンケートの補充調査を継続的に実施するとともに、3.事後のインタビュー調査への協力を表明してくれている参加者への期間を置いた事後調査を実施し、HL効果の持続性に関して検証することを計画している。4.さらに学会発表によるフィードバックはもとより、独自にHLシンポジウムを開催して研究成果を発表すると共に、HL関係者との意見交換を行い研究を一層深化させることを企画している。来年度(最終年度)には、これまでの研究成果を取りまとめ、Webサイト上で公開するとともに、これまでの実践的研究や理論的研究成果を書籍にまとめて公表し、HL関係者の実践的交流や普及活動を目的とした今後の研究活動に資する団体(ヒューマンライブラリー学会)の設立を期し、HLを活用した教育的実践や理論的研究の活性化を目指す。
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Causes of Carryover |
理由1.当初予定していたヒューマンライブラリー開催時の事前態度調査が、ヒューマンライブラリー開催者の運営方法および調査者と開催者の事前の打ち合わせなど実施方法の詳細な詰めができず、結果的に事後のアンケート調査のみになり、事前の数量的測定できず断念せざる得なかったこと。理由2.ヒューマンライブラリー開催が年度末に多くが重なり、事後のインタビュー調査も年度内十分実施できなかったことが大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.今年度ヒューマンライブラリー実施前に主催者と事前態度調査を前提とした開催方法について入念な打ち合わせし、事前調査の方法を策定し、引き続き事後の態度調査を実施すると共に、事前の態度調査も実施する。可能なら独自に条件をコントロールしたHLを開催して事前事後調査を実施する。2.新たにヒューマンライブラリー参加後、期間を置いた事後インタビュー調査を実施し、ヒューマンライブラリーの持続的効果を測定する。そのためにこれまでの参加者への新たな調査協力への同意は得ている。
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Research Products
(2 results)