2016 Fiscal Year Research-status Report
偏見の低減のための教育-ヒューマンライブラリーの効果研究
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15K13212
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
坪井 健 駒澤大学, 文学部, 教授 (00119108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 和宏 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (70364726)
横田 雅弘 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (90200899)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 偏見の低減 / 自己概念の変容 / アフォーダンス理論 / 異文化間能力 / 対人関係の再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
偏見の低減のための実践であるヒューマンライブラリー(以下HLと略す)の教育的効果に関する調査研究の2年目である平成28年度は、前年度のHL読者と生きた本のアンケート調査の継続と調査研究結果の集計分析及び各地のHL実践者による実践経験の交流を行うと共に関連理論と接合しHLに関する理論的研究を行ってきた。 具体的には、1 .川口HL(4月・10月)、玉川HL(8月)、世田谷HL(10月)、明大HL(11月)、学芸大HL(12月)、日本語学校HL(1月)などで生きた本と読者を対象にアンケート調査を実施しデータの集積に努めた(坪井、横田)。前年度の調査を含めた全アンケート調査結果を集計・分析して全般的なHLの効果に関する解析を行った結果、読者のHLイメージの際立った変容効果(明るさ・身近さなど)が確認できたこと。また生きた本自体もHL体験による自己概念の変容を含む肯定的反応が顕著に見られることが明らかになった。2.これまでの研究成果の報告と共に各地の12名の実践者に実践報告をしてもらい、HL関係者と多様な意見交換を実施した(坪井、横田、工藤)。3.それらの調査研究の成果と共に既存理論に絡めて概念的分析を行い、その一部を口頭で発表し論文等にまとめた(坪井・工藤)。 個別的には、横田は、横田は明大HL参加者の調査とともに、前年の参加者の10か月後の継続調査を実施し、HLの持続的効果について検証した。工藤は、前年の豪州調査のインタビュー・データを分析し、HLの運営方法や形態の多様性を概念的に整理するため、アフォーダンス理論を使って、個人と環境の関係を中心にHLの効果をとらえる概念的枠組みの構築を試みた。坪井は、HL実践の意味の理論的解析を行い、偏見の低減や異文化間能力の育成プロセスの解明、それに対人関係の再構築のメカニズムを既存の諸理論に絡めて概念的分析的解析を推し進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年とを含めて予定したアンケート調査は一応実施できたが、その成果については一部に思うようなデータが得られていない。特にインタビュー調査は前年度の結果を踏まえて平成28年度は実施を断念したこと。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで2年間アンケート調査は順調に集積されており、調査結果の集計や分析も順調に行われている。特に、既存理論や先行研究との比較考証などを通じて経験的一般化に向けてのHLの経験的研究や理論的研究はおおむね順調に推移している。しかし、当初予定していた体験者インタビューからは十分な成果が得られず、28年度は積極的なインタビュー調査の実施を見送った。インタビュー調査から有益な情報を得るためには新たな方法を工夫する必要があると感じているが、残りの研究期間中に十分な調査結果が得られるか否かは未知数である。そのために別途、参与観察調査の充実も付加することを考えている。 今後は、1.引き続きアンケート調査、インタビュー調査、参与観察調査などを継続し、確実な経験的一般化に資するデータを蓄積しつつ、それらの調査結果をさらに分析し解析してすること。3.HL体験者への事後的調査を実施して持続的効果に関する研究にも取り組む必要性がある。3. これまでの研究成果を踏まえて、その実証的知見を既存理論と関連させてHL実践の意味を理論的に解明して一層確実に学術的基盤を確実なものにすること。4.その研究成果を各種の関係学会などを含む多様な機会で発表してHL実践とその効果の認知度を高めると共に、学校教育、生涯教育、社員教育などの実践者や研究者などの関係者に周知させること。5.他のHLの実践者や研究者と持続的に実践的交流や研究的交流を行える機会を創設して、持続的な研究交流できる環境を整えていきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施予定だったインタビュー調査を前年度の実施結果の成果を吟味したところ、そのまま継続的に実施することでその成果が十分期待できないと判断したために、実施を一時断念したこと。また、体験者の継続調査のサンプル数も当初予定した通り十分確保できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度インタビュー調査方法を変えて新たに実施する予定である。しかし、予備的な実施でも十分な成果が得られない場合は、新たに参与観察調査等を企画して実施する予定である。体験者の継続調査は新たなサンプルで補充調査する予定である。
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Research Products
(4 results)