2015 Fiscal Year Research-status Report
未就学児の潜在的文字学習評価に基づく発達性ディスレクシアの早期発見と介入法の確立
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15K13259
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
奥村 安寿子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的障害研究部, 流動研究員 (60749860)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文字学習 / 文字列処理 / 事象関連電位 / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
未就学児における文字学習を評価するための脳機能および行動指標を作成した。主な対象者は成人と小学生であり、未就学児における文字学習評価の準備的な研究として、学校における正式な文字学習の結果を評価出来る指標の確立を進めた。脳機能評価では成人を対象とし、ひらがなの文字列(有意味語・無意味語)に対する事象関連電位の初期成分を測定した。目的はそれらに反映される文字列処理の処理単位を明らかにすることであり、文字列を1まとまりとして行われる処理と、文字列中の1つ1つの文字に対して行われる処理のどちらを反映するか検討した。その結果、文字列に対する事象関連電位の初期成分には文字列中の個々の文字の処理を反映するものがあることが示唆された。文字学習の初期段階では文字列中の文字を1つずつ認識していくことが知られており、上記の反応はそうした初期の文字学習を評価する脳機能指標として有用と考えられる。 行動指標の作成では小学生を対象とし、文字を用いた課題での反応時間と音読成績、および注意等の個人特性に関する検討を行った。その結果、反応時間は文字学習の程度(音読成績)だけでなく注意特性とも関連する可能性が示唆された。従って、文字の学習や処理については今後、注意の要因も含めて検討・評価する必要がある。文字を習得する途上の読み手(小学生)、および文字習得が完成した読み手(成人)において得られた結果は未就学児の評価基準を確立する上で重要な成果であり、今後はこれらを基に未就学児のデータ収集を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
未就学児の文字学習を評価する方法について、成人と小学生を対象とした研究から測定手法と指標が示されつつある。しかし、評価課題やパラダイムの確立と予備データの収集・解析に当初の予定よりも時間を要したため、実際の未就学児への適用とデータ収集が計画通りに進んでいない。そのため、計画よりもやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究成果に基づき、未就学児における文字学習の評価方法を確定し、それらを用いて未就学児を対象とした脳機能および行動データの収集を行う。また、副次評価項目(全般的知能発達、語彙、文字知識、注意等)の収集を併せて行い、脳機能・行動データとの関連性を検討する。それらを通じて未就学児の文字学習とその個人差を判定する手法を確立する。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究は、成人および小学生を対象とした評価指標の確立が主であったため所属機関に既存の機材で進めることができ、計画よりも物品費が抑えられた。また、未就学児を対象とした新規な知見の取得が遅れているため国際学会での成果報告がなく、旅費が予定より少額になったことも次年度使用額の発生につながった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未就学児を対象とした調査を所属機関外の施設で開始する予定であり、それに必要となる機材等の購入で物品費として使用する。また、国際的な成果発表をより積極的に進めるための経費として使用する。
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