2017 Fiscal Year Research-status Report
未就学児の潜在的文字学習評価に基づく発達性ディスレクシアの早期発見と介入法の確立
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15K13259
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
奥村 安寿子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的障害研究部, 科研費研究員 (60749860)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文字学習 / 幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
未就学児を対象として,行動指標を用いた潜在的な文字学習の検討を行った。方法として,幼稚園および保育園の年中児・年長児に,よく知っている言葉の1文字を隠したものと,その言葉に対応する絵を見せ,隠されている文字を選択肢の中から選んでもらった。これと合わせて,参加児がひらがなを何文字音読出来るかを調査し,潜在的な文字の学習(選択課題)と顕在的な読み(音読)の対応関係を調べた。その結果,ほとんどもしくは全てのひらがなを音読出来た参加児では選択課題もほぼ満点であったが,読めるひらがなが半数未満であるにも関わらず,選択課題ではチャンスレベル以上の正答率を示した児が一定数いた。ひらがなが全く読めない(10文字以下)子どものほとんどは,選択課題もチャンスレベルの成績であった。このことから,まだひらがなを読めない未就学児でも言葉の中の文字についてはある程度の認識を持っていることが示された。 今年度の研究で用いた上記課題は日常場面でも実施出来る簡便なものであり,実施時間も数分以内と非常に短い。そのため,年少の未就学児にも適用出来る,潜在的な文字学習評価の指標が得られたと言え,発達性ディスレクシアの早期発見にも寄与することが期待される。ただし,今年度は年長(5-6歳)の参加児が多かったため,多くの子どもがほとんどのひらがなを音読出来ており,文字を潜在的に学習している段階にある子どもの絶対数は少なかった。そのため,年中(4-5歳)以下の参加児でデータ収集を継続していく必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未就学児における潜在的な文字学習の一端を明らかにすることができ,多くの子どもを簡便に評価出来る行動指標の確立に向けて一定の成果が得られた。今後の検証が必要ではあるが,未就学児を対象としたデータ収集と評価方法の開発を更に進めることが出来たことから,おおむね順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で得られた行動指標と,前年度までに得られた脳機能指標(事象関連電位)についての知見を統合し,発達性ディスレクシアを早期に発見する評価法として確立する。また,今年度の参加児に追跡調査を行い,その後の読み習得との対応を検討する。
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Causes of Carryover |
データ収集の大半を幼稚園・保育園をフィールドとして行ったため,謝金の発生が少なかった。また物品の一部も,所属機関に既存の機材および資料を用いて研究を進めること出来たため,支出が抑えられた。次年度使用額については,データ収集を継続するために使用する。
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