2015 Fiscal Year Research-status Report
ダイヤモンドナノ結晶による干渉性散乱を利用した中性子減速材の開発
Project/Area Number |
15K13413
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
三島 賢二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, その他 (20392136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田崎 誠司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40197348)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中性子 |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子は電荷をもたないため強い透過力を持ち、また、熱中性子のドブロイ波長が1.8Åという一般的な固体の原子間距離と同程度の波長をもつため、イメージングや中性子散乱を利用した構造解析等に幅広く用いられている。本研究では、干渉性散乱による散乱断面積増幅効果を利用した新しい概念の中性子減速材の開発とその原理実証を目的とする。中性子が結晶のような原子間隔の揃った物質と散乱する場合には中性子波の干渉により、その散乱断面積が増加することが知られている。本研究ではダイヤモンドナノ結晶を中性子減速材に組み込むことにより中性子源の効率を飛躍的に増大させることを目標とする。 ダイヤモンドナノ結晶は主に産業用途として近年広く用いられており、その種類も用途によって様々なものが市販されている。ダイヤモンドナノ結晶として、その仕様からエアブラウン社のナノダイヤ結晶を選定した。J-PARC物質生命科学実験施設の高強度全散乱装置NOVAを用いて中性子散乱データを取得、評価を行う予定であったが、トラブルにより延期されている。2016年前期のビームタイムは一般課題として承認された。 最適化したダイヤモンドナノ結晶減速材を実際に設計、作成し、小型中性子源減速材としての性能評価を行う予定である。パルス中性子源であるため飛行時間法から減速材内部で散乱の様子が解析可能である。平成27年度に飛行時間法の試験を行い、期待通りの性能を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予定ではJ-PARC中性子ビーム実験2015年後期を申請する予定であったが、中性子源トラブルのため、2015年後期の募集は中止された。2016年前期のビームタイム課題として申請を行い、承認された。以上から計画が約半年遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行のためには、ナノダイヤモンドの中性子散乱を精度良く抑えることが必要であり、可能な限り早く中性子散乱データの取得を行う予定である。また、中性子散乱以外の評価も並行して行う。 評価用の中性子源KUANSは受け入れ可能な状況にある。性能評価は数種類の異なる減速材を入れ替え、その差分を測定することにより行う。ボイド、ダイヤモンドナノ結晶のみ、ポリエチレン+ダイヤモンドナノ結晶といった種類の測定を想定している。シミュレーションを用いて評価実験に最適なセットアップを構築する。KUANSにて評価実験を行い、シミュレーションと比較することで解析を行う。
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Causes of Carryover |
J-PARC中性子源トラブルのため、予定していた測定ができなかった。 それに伴うサンプルの選定が未実施であるため、予算の繰り越しを行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
サンプルの測定を行った後、合わせて中性子を用いないサンプルの性能試験を行う。
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