2017 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ航跡場によるクリーン小型ビームダンプの研究開発
Project/Area Number |
15K13494
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
佐伯 学行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (70282506)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ビームダンプ / プラズマ航跡場 / ILC |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、シミュレーション計算を行っていたUniversity of California at Irvine の海外研究協力者が転職のために当研究を続けることができなくなってしまい、研究が大きく遅れることとなった。同大学の学生が代わりにシミュレーション計算を行うこととなったが、シミュレーションに不慣れなために大きな進展が得られなかった。このため、平成29年度は、新しくシミュレーション計算を行うことができる人材の確保に努めた。まず、海外研究協力者である Denis Perret-Gallix氏にシミュレーション計算のスキルを獲得してもらい、計算を再開することとした。幸い、University of California at Irvineの前任者から全面的にバックアップを受けて、Denis Perret-Gallix氏がこれまでの計算を再現することができた。このため、今後、3m以上のプラズマ航跡について計算を続行していく目処が立った。また、国内のプラズマ物理の著名な研究者である神門正城氏に当研究に参加して計算を行うことができる研究者を探していただくように依頼し、現在、新しい人材の確保に努めている。ビームの全エネルギーの減速計算が行われていないため、プラズマガスチェンバーの最適化などは未着手の状況である。これまでの研究の結果は、2017年10月に行われた海外国際会議 LCWS2017, 23-27 Oct. 2017 in Strasbourg/Franceで研究協力者のDenis Perret-Gallix氏により報告・発表された。また、2017年11月に行われた海外国際会議 4th WS ESS at Research Infrastructures, ELI-NP, Magurele, 23-24 Nov. 2017 で代表者である佐伯により報告・発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度は、ILCビームに近い単純なバンチ形状でプラズマ減速が行われるかを詳細なシミュレーション計算で確認することを最優先とし、3mに亘るプラズマ航跡場による減速で250Gevのビームが15%のエネルギーを失うことを確認することができた。平成28年度は、さらに研究を推進するため、KEKの計算機センターを利用したり、専用のワークステーション計算機を購入するなど、計算機能力を向上させたが、当初の想定より計算機能力がまだ不足している。また、研究協力者が転職のために当研究を続けることができなくなってしまったため、現在は学生がシミュレーション計算を行っているが、シミュレーション計算に不慣れなために大きな進展が得られていない。このため、海外研究協力者であるDenis Perret-Gallix氏がシミュレーション計算を推進する体制を構築し、さらにシミュレーション計算のスキルを持つプラズマ物理学者を新しい研究協力者として確保する努力を行っている。また共同研究者の所属機関が全世界に拡散しており、当初想定した年1回の小規模ワークショップの開催が難しい状況である。遠隔会議システムや国際会議への参加の機会を適宜利用して直接会合を行う努力をし、さらにグループ内の密接な連絡や議論を行う機会を増やす必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
250Gevのビームエネルギーを全てプラズマ航跡場による減速でビームダンプするシミュレーション計算を完了することを最優先課題とする。3mのビームダンプのシミュレーション計算では、3mの後半においてエネルギー損失率が減少する傾向が見えた。このため、距離が増すにつれてエネルギー損失率がどう減少するかを確認することを目標とする。しかし、シミュレーション計算の主力のマンパワーが失われた状態にあるため、対策が必要である。海外研究協力者であるDenis Perret-Gallix氏がシミュレーション計算に専念する体制を構築すると同時に、シミュレーション計算のスキルを持つ国内のプラズマ物理学者を新しい研究協力者として確保する努力を行う。また、我々のグループによる複数回の研究発表に触発されて、CERNやSLACのプラズマ研究グループが同じ研究課題でシミュレーション計算を始めたため、これらのグループとの共同研究を模索する。現在はKEKの計算機センターのジョブシステムを利用しているが、さらにスーパーコンピューターの利用が可能かなど、計算機能力を向上させることも検討する。ビームダンプのガスチェンバーの最適化設計について、ガスの密度などパラメーターを変えたシミュレーション計算が必要であるが、詳細計算を繰り返すには計算機能力が不足しているため、代表的なパラメーターを選択して計算を行うことで最適化の方向性を把握する。研究協力者が当該課題とは違う複数の課題を担当しており多忙であること、また共同研究者の所属機関が全世界に拡散していることから、時間的な制約と旅費の制約から、当初想定した年1回の小規模ワークショップの開催が難しい状況であるが、遠隔会議システムや国際会議への参加の機会を適宜利用して直接会合を行うこととする。
|
Causes of Carryover |
ワークステーション計算機に対する保守費用が発生しなかったためと、当初想定した年1回の小規模ワークショップの開催が実現しなかったために、次年度使用額が生じた。国際学会などで成果を発表するための旅費として使用すると同時に、シミュレーション計算を支援するためのノートPCを購入する。
|